詩)せっかち遺伝子
僕が夕飯の洗い物をする前にアイフォンで少しチェックしていると
それそれ 私の出番かしらとばかり 母が台所へ
いやいや やるからいいよと言うと
そうね あんたスマホみとるから ぶつぶつといいながら
もとの席に戻ってくる
なんだかエネルギー余ってるのかなあ
翌日ぼくは朝から出掛けるからねと念を押していたのに
あんた今日朝からどっか行くの?というので
昨日も言ったけど今日は朝から夕方までいないから晩御飯作れないからなんか買ってくるよと言う
すると母がなら私がミンチカツ買ってくるよあの店のミンチカツ美味しいからねと言う
でもあの店結構遠いよ歩いていくの大変だというと
大丈夫大丈夫 前はあそこより遠くまで歩いてたんだから大丈夫と言い張る こうなったらもう何を言っても駄目だ
わかったよ あの美味しいミンチカツを買っといてねと頼む
その日は東京方面の用事を終わらせて17時ころに帰る
ミンチカツ買えた?と聞くと
待ってましたとばかりに母が話し始める
11時前に一番に肉屋に着いたらまだ空いてなくてそしたらおばあさんがこれから開くからここで待っていればいいよと教えてくれて
そのおばあさんと(自分も客観的にはおばあさん)ここは唐揚げも美味しいとか肉もいいとか(肉屋である)と話したと一気に話し
ミンチカツを浩子さんが帰ってくるから早く温めておかないとという
いやいや帰ってきてから温めればいいよといい一度は納得したが
もう帰ってくるから温めんでいいね?
まだいいよ
もう帰ってくるけんそろそろ温めんと繰り返して言う
妻帰ってくる
ほら帰ってきたよ!温めんでよかったねと悪いことをしたかのように言うので今温めるとさらに言う
3人で温めたミンチカツと母が作ったポテトサラダも一緒に食べる
母はこのミンチカツ美味しいわあと繰り返し言う
僕も美味しいと何回も返す
今日は母にとってはやり切った日なのだ
ドジャーズの大谷が活躍するのも見ずにミンチカツを開店前に買いに行き
後ろを振り返ると長蛇の列が出来てたよ!と嬉しそうに話す母はやっぱり早くいってよかったと思っている
そういう姿を見ていると自分も少し
いやかなりそうなんじゃないかとそこに自分が見えてしまうのだ
すぐに結論を欲しくなるところとか
途中省略して結論だけ見たくなるところとか
満足そうにテレビを見る母を見て思う
せっかちというのは遺伝する