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先日、私が数年前にクラウドファンディングで絵本を2冊出した、ということを知った知人からこう尋ねられた。 「どうして絵本を描こうと思ったのですか」 甦ったのは8年前の記憶。 当時、就活生だった私はコピーライターとして京都の広告会社に勤めるか、東京の大手人材会社に行くかで悩んでいた。 ある冬の日の朝、京都の広告会社へのインターン出勤前、四条烏丸のカフェベローチェでリクルートスーツの私はホットココアを飲みながら窓の外を見ていた。 考えていたのは 「どうして私は"人間"に生
ずっと 欠片を探していた 探すために 生きていたようなものだ 欠けた部分が 傷口のように滲みて 不恰好だから と言うと 言われなきゃ 気づかなかったし 知っても 気にならないよ と、あなたは答えた 私と同じように 欠片を探していた人は 欠けた部分が好きで 欠けている君だからこそ そこが魅力で 好きなんだと 言われたそうだ 本当は私も そう言われたかったのかも しれない あなたの愛が無いなどと 疑うつもりは毛頭ないが 寂しくて 物足りなく感じた そして 気づい
わたしは ひとり いたらいい。 わたしは この世に1人だけ だから 愛する男は 1人いたらいい たくさんの男に ちやほやされて 楽しいのは その一瞬 わたしは わたしを大切にしてくれる たった1人が いたらいい わたしは この世にたったひとり ほかのだれとも 重ならない 生まれてくる時も しにゆく時も たったひとりのわたしを わたしが愛するように わたしを愛してくれる人が いたらいい わたしは、1人、いたらいい。
君は猫の箸受けになった 大好きな猫の箸受けになった 覗いても叩いても隠れん坊 仕方ないから箸を置く 可愛い少しとぼけた箸受けだ 祖母は鮭をくわえた熊になった 父は抱腹絶倒の民謡になった みんな何処にも行っていない 何があっても我家はここだ 今朝も君の胸に箸を置く
今年の初めに作った結び目が ほどけぬようにと過ごした冬 切ろうと思えば簡単で ほどこうと思えばとても簡単で でも その一歩手前で やはりそれが出来ずに やはり 切りたくなくて ほどきたくなくて 気づけば 冷たい強風の中 しっかりと結び直しておりました 明日からは もう3月 また新たな季節が始まるのですね 最初は少し緩かった結び目も 月日が経つ程に
彼は 詩人で絵描きだった 肌は少し浅黒く 口をあまり開かず喋る 目には斜視があって 前かがみで歩き 人の中では いつも浮いていた 彼と知り合ったのは 私がアパレルの 倉庫作業の仕事を していた時 新しく入って来た バイトの一人だった お互い映画や音楽 小説等の趣味が 合ったせいか 意気投合し 私生活でもよく遊んでいた 彼はバスキアを尊敬し 絵を描き 太宰や森鴎外等の 純文学を好んで読み 詩や短い話を書いていた 家に行くと 一人暮らしなのに 二段ベッドが置いてあり 二段ベッド
*「永別の詩」について*モノ書く人間の業というのでしょうか。 いえ、いい歳をしているのに頼りないことですが、単にわたしが父を送る為の、その最期(とき)までの心の杖のようなものが必要で、それで自分の為に書こうとしているのだと思います。 お許しください。 これは年古(としふ)りた娘が、去りゆく父へ送る最後の恋文なのかもしれません。 2020.12 つきの 2020年12月、父は癌の為、入院していたホスピスにて永眠いたしました。この「永別の詩」は、その父との日々を書いたもの
うすら寒い 霧時雨 傘にうちになんとも言えない かなしい気持ちがおそってくる 何がかなしいのか あまりに曖昧で あまりに滑稽 前を歩く人たち 傘のうちに灯りがともる ああ そうかそうなんだ 羨望なのだ 羨望がかなしくさせるのだ あの灯りがほしいのだ 腕に溜まる 水のつぶ さっとひと振り払いのける 空はほの暗く さざなむ雨音が虚しい ビルの合間を歩く 風がほほを切りつける こんな世界が本当なのだろうか これは誰の物語なんだろう かなしみの根源 そこには惰性 そこには