うちの母が言う事には
うちの母は躾にとても厳しかったです。
小さい頃にはよく分からなかった、敷居を踏むな、本を跨ぐな、自分から挨拶しなさい、何かをもらったらすぐに言いなさい、、、、から始まり、
自転車の止め方、畳の掃き方に至るまで事細かく言われました。買い物時、商品を入れたカゴがどんなに重たくても、食べ物を床に置くことは許されませんでした。
嘘をついて、バレた時なんか、
柿の木に括られました。
ですが、今となっては厳しく躾られてよかったと心から思いますし、母が言っていた言葉に納得するようになりました。その中で特に心に残っていたものをピックアップしてみました。
●3年早いは7年遅い。
高校生の時、私はコムデギャルソンに夢中でした。でもお小遣いで買える金額ではなかったので、雑誌を見せて、これが今の流行りだからどうしても欲しいとねだったことがありました。それは高知県では最先端のアシンメトリーのワンピースでした。
母の返事は
世の中の流行なんてもんはね、大体10年で回ってるの。私が青春時代に履いたミニスカートだって、また流行って来てるから。テレビ見たら、芸能人の人、履いてるでしょ。
でもここでは(高知市のこと)まだミニは流行ってない。お前が見たのは東京の雑誌でしょ?(←全国誌(笑)それここで、流行るまで、まだ3年かかるわー。早すぎたら、みんなにわかってもらえないの。
一番かっこ悪いと思われちゃう時期なんだよ、今は。
私が欲しがったアシンメトリーは、3年早い、そうすると10年で流行が一回りするという母の理屈では7年遅い事になり、ダサいと思われるから、という理由で買ってもらえませんでした(笑)
しかし、母はケチだった訳ではなく、自分なりの基準があっただけで、むしろファッションは大好きでした。自分のものを購入する時の決め台詞(言い訳)は
●新しい血(服)を入れないと人間は古くなる。
人は常に何か新しいものを取り入れていかないと、考え方も古くなるし、話題も乏しくなるから、思考を変えたい時には何か新しいものを買うのが良いという信条で、仕事で行き詰まっていた婚姻前の主人に、いきなりズボンでも買いなさい、とお金を握らせていたこともありました。
頭でどうにもならない時は物理的に何かを動かそう!と言う発想の持ち主でした。
また、実家は元々商売をしていたので、私がモロッコレストランを始めた時には母の言葉がとても役に立ちました。
●蔑まれてもダメ、羨ましがられてもダメ。
客商売というのは、お客さんにへりくだり過ぎて、馬鹿にされてもダメだし、儲かってなさそうな雰囲気を出すと誰も来たがらない。かといって、景気が良すぎる素振りを見せると、お金を使うのが馬鹿らしくなるので、それも良くない。
卑下しすぎることなく、自慢しすぎることなく、友達との付き合いも同じだからね!と念を押されました。今で言うマウントの取り合いはやめなさいと言うことでしょう。
また従業員との関係では
●やってもらっていると思いなさい、
やらせてもらっていると思いなさい。
どんなに従業員を大事にしてると言っても、上に立つ人は疎まれるもの。店主として指示は出しても心の中では常に、謙虚でいなさいと言う教え。
日々カチンとすることはあっても、この言葉を思い出すと、自分の中で、まあまあまあまあ、落ち着け!と余裕が生まれました。大好きな言葉です。
それでも生活していたら理不尽なことに出逢います。自分に非がなくて辛い立場に立たされることもあります。母が推奨した新しいものを買っても収まらず、気持ちが泡立ってどうにもならない時、
母は、一回寝なさい、と促し
●寝るより楽はなかりけり。
と言いました。
話を聞いてもらっても、慰めてもらっても気持ちの持って行きようがなかったのに、この少し浮かれたような言い回しは 私を現実から引き離してくれました。
自分の時間を削って悩んだなら、一回諦めて自分のために時間を使おうね、という事だと落ち着いた時に聞きかされました。
母には小さい時から母のお母さんはいませんでした。
私が母から聞いた言葉は全て眠れない夜に自ら生み出した言葉だったんでしょう。
悩んでばかりいても前に進めない、
今できることはなんだ!
せめて体力温存だ!
今でも、トラブルがあり悩む夜があると、つぶやきます。
寝るより楽はなかりけり。
というように母の言葉を深く理解できるようになったのですが、私に子供はなく、これを伝える人がいないのです、残念。-
仕方ない、じゃ今、居る人に聞かせるか、ってことで 主人と愛犬に
事あるごとに言っています。
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