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7インチ盤専門店雑記756「マイケル・ブレッカー2:イースト・リヴァー」

1970年代後半、徐々にレコードに書かれているクレジットが気になり始めた頃、マイケル・ブレッカーとランディ・ブレッカーの名前はあちこちで見かけるもので、否が応でも気になりました。リーダー作となると、75年のブレッカー・ブラザーズのファーストとなるのでしょうが、マイケルにとってサイドマンとしては1969年のランディ・ブレッカー名義のアルバム「Score」が初仕事のようです。その後、70年代前半からかなり多岐にわたる仕事を手掛けておりまして、私の知る限りではジェームス・テイラーの「ワン・マン・ドッグ」にもう名前があります。72年の作品ですから、かなり早いです。同年のトッド・ラングレン「Something / Anything?」もありますね。翌年にはルー・リードの「ベルリン」やジョン・レノンの「マインド・ゲームス」といったヒット作/有名作で名前を見ることになります。否が応でも意識することになります。

さらに面白いことがありまして、ジャズ畑のアルバムでも多々バックアップ的にやっているんだとは思います。ジョージ・ベンソンやビリー・コブハム、パティ・オースティン、ジャコ・パストリアスといった人たちの作品にも名前がありますからね。でもそういうタイプではなくて、例えばエアロスミス「Get Your Wings」とかブルース・スプリングスティーン「Born To Run」といったアルバムにも出てくるんですよね。この辺が普通ではないところだと思うのですが、如何なものでしょうか。

そのほかにもポピュラー・ミュージックのいいアルバム、自分の好きなアルバムになんでか名前が出てきまして、何者ぞとなっておりました。例えばカーリー・サイモン「Hotcakes」、ポール・サイモン「Still Crazy After All These Years」、マイケル・フランクス「The Art Of Tea」、エルトン・ジョン「Blue Moves」といったあたりになると、もうファースト・コールの貫禄が出てきているのではという印象でした。フィービー・スノウ、チャカ・カーン、リンゴ・スター、アート・ガーファンクルといったあたりはさほど違和感もなく、やっぱりという程度にとらえておりました。

クロスオーバーがだんだんフュージョンと呼ばれるようになった頃だと思いますが、渡辺香津美の「トチカ」やスティーリー・ダンの「ガウチョ」あたりになると、もう只者ではないなという印象にかわりました。ここらで、評判は耳にしていたブレッカー・ブラザーズを聴いてみるかとなりました。81年「Straphangin'」がリリースされた頃です。意外にリーズナブルなお値段で手には入りましたが、これがなかなかの難物でしてね。直ぐに「いいね」とはなりませんでした。新盤も敷居が高い印象でしたし、「Back To Back」や「Don’t Stop The Music」あたりはまだ好んで聴けましたが、それ以外が意外なほど取っつきにくいものに思えたものでした。

その一方で、タイトルからちょいと手が出なかったアルバムがありまして、78年のライヴ盤「Heavy Metal Be-Bop」なんですが、これもお安く手にいれたので、さほど期待せずに針を下したところ、もう30秒でぶっとびました。冒頭の「East River」の衝撃、忘れられません。

文字媒体ではファンキーだファンク・ジャズだと言われておりましたが、ようやく目覚めましたよ「これがファンクというものか」と。…後々考えるに、典型的なファンクではありませんけどね。まあ大好きな曲です。テリー・ボジオの強烈なドラムスに煽られてマイケルもランディも大暴れしております。「サム・スカンク・ファンク」もハマりましたねぇ…。

「おお、こんな素晴らしい人たちだったか」と思った直後にブレッカー・ブラザーズ解散というニュースが入り、「なんやねん」というタイミングでしたけどね…。結局その後のリーダー作はリリースと同時に買うトップ・ランクのアーティストとなりまして、まあ可能な限り入手しましたが、参加盤が多すぎてとてもコンプリートとは思えません。多作さ加減で言っても、ダントツなのではないでしょうか。…デヴィッド・サンボーンという強敵もいますけどね。

ただしですね、どういうわけかフュージョン/ファンク・ジャズ界隈の音源はCDで聴く習慣がありまして、あまりアナログ・レコードは買ってないんですよね。今さらにちょいと残念なことをしたなと思います。





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