周辺の文脈も理解すると知識になるーなぜ働いていると本が読めなくなるのか(三宅香帆著)を読んで
会社の近くにある書店で、新書一位になっていた本著。社会人になってから読書をするのに力がいるようになったと感じていたこの気持ちへの解を書いてくれていると思うと手に取らずにはいられなかった。
あらすじ
「大人になってから、読書を楽しめなくなった」「仕事に追われて、趣味が楽しめない」「疲れていると、スマホを見て時間をつぶしてしまう」…そのような悩みを抱えている人は少なくないのではないか。
「仕事と趣味を両立できない」という苦しみは、いかにして生まれたのか。自らも兼業での執筆活動をおこなってきた著者が、労働と読書の歴史をひもとき、日本人の「仕事と読書」のあり方の変遷を辿る。そこから明らかになる、日本の労働の問題点とは?すべての本好き・趣味人に向けた渾身の作。
感想
まえがきで著者の考えと問題提起が書かれている。「なぜ私たちは、労働と文化的生活の両立が難しいことに悩んでいるのか」「どういう働き方をすれば文化との両立が叶うか」を検討していく。
明治時代から現代まで「仕事と読書」のあり方を見ていくが、90年代で今まで読書を通じて立身出世や会社での出世を目指すことができた、自ら会社や世の中へ働きかけをすることで変えることができた世の中から、「経済」という見えざる大きな波に捉われることで、「外部を変えることはできない」「コントロールできる自己を変革していく」風潮が高まっていったあたりから、私が知る現代に通じていると感じた。ちょうど世の中の雰囲気がガラリと変わる時期。私も学生運動が盛んな時期を知りたかったな。
成功観についても変遷があり、明治~戦後は「成功に必要なのは社会に関する知識」であったが、現代においては「自分に関する行動」が大切。なので現代において「自分に関係ない知識」はノイズになってしまう。自分に関係のある情報だけあればいいので、情報の周辺になるノイズ=文脈は不要なものとみなされる。
情報を得るまで、周辺の文脈だらけになっている本、読書がしんどく感じてしまう。確かに。
残業時間を短くしようとは会社でもよく言われていて、月20時間程度で収まっているので、時間で言うと楽に見られるかも知れないけど、生産性向上はずっと言われているし、無駄だと思われた移動時間や電話の取次ぎやらある意味余裕が生まれていた時間がなくなり、その分別のやらなきゃいけない業務が乗ってて、時間単位での負荷が増えてるって、きっと皆思っているよね。
そんな負荷の大きいの仕事をした後に、負荷の大きい読書なんて、心休まらないよ…。私も読みやすいジャンルの本を手に取ることが多いし…。
意識せずに生活していると、何も考えなくても「良い日になったなー」と思えるものに逃げがち。私も「今日も文化的な生活を営むことができた!」と感じる毎日にしたい!
そのためにも、今の仕事との向き合い方は考えないといけない。労働時間とは別に業務に関わる情報を得ないといけないけど、せっかく自分の中に取り込む情報なら、周辺の文脈も含めて学びたくなるような知識として吸収したい。
書いてて思ったのが、受験勉強を「教養・知識」として捉えていた人は、終了後も活かせているし、次に進むための通過点で勉強を「合格するために必要な情報」だけ得ている人は、そりゃ終わってから何も活かせないよな…。
情報だけではなく、周辺の文脈を理解することで、知識や教養となる。今からでも大切な捉え方だなと思う。
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