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こんな出会い方なんてきっとないけど、


日曜日の16時過ぎに、私はちょっと遠くまで散歩に行くことにした。

小さいカバンに財布とスマホだけ入れて、歩きやすい靴を履いて家を出る。

今日は本当にいい天気で、何か素敵なことが起こりそうな予感さえする。

30分歩いたところで、私は住宅街にひっそりと佇む小さな神社に到着した。

木々に囲まれた神社はどこか神秘的な雰囲気があって、風がひんやりと気持ちいい。ちらほらと人がいるだけで、静かでとても居心地のいい神社だ。

昔からおばあちゃんに言われ続けた「ご縁が二重にあるように、55円用意するんだよ!」という言葉を思い出し、お賽銭を投げ入れる。

そして、二礼二拍手一礼。

最後の一礼を終えて身体を起こしてふと横を見ると、
隣りでお参りしていた男性と目が合った。

黒髪マッシュで白Tがよく似合う、爽やかな見た目の男性だ。

お互いにほんの軽く微笑み合い、私はなぜか自分の顔が赤くなるのを感じて足早に階段をかけ降りていった。

絵馬でも書いて帰ろう、そう思いながら一つ手に取り、
白紙の絵馬を眺めながら何を書こうか考えるふりをして、
本当はさっきの不意な微笑みを頭の中で繰り返し、ドキドキしていた。


しばらくすると隣りに気配を感じ、
「ここ、僕初めて来ました。」
と話しかけられた。

さっきの男性だった。

「あ、えっと、私も散歩中に偶然見つけたんです。」とびっくりしながら返事をすると、彼はさっきの優しい笑顔を浮かべながらコクっと頷き、絵馬を書き始めた。

ちらっと覗いてみると、そこには【健康第一!】と大きな字で勢いよく書かれていた。字がちょっと汚くて、私が思わずクスッと笑うと、「そちらはなんて書かれたんですか?」と聞かれた。

うーんと考え込んで、【これからも美味しいご飯がいっぱい食べられますように】と書いた。

はははと彼が笑い、「食いしん坊なんだね」とまた微笑みかけてくる。

食いしん坊と言われたことよりも、その眩しい笑顔で見つめられていることに赤面してしまった。


そこから自然と会話が始まり、彼が私の2つ上で、不動産業に携わっていることが判明した。

話しながら一緒に神社を出ると、
この後どうするか、などお互い何も言わないまま、
そしてお互い目的地のないまま、話しながらただ歩き続けた。

ふらふらと散歩していると、住宅街の隅に小さなスペイン料理店を見つけて、私たちは入ってみた。夫婦が経営しているその店は、ロウソクの灯りに温かく包まれ、とてもアットホームだった。

私たちはトマトやオリーブが乗ったカラフルなピンチョスやお肉料理をつまみながら、気づいたらワインを2本も開けて、さっき出会ったとは思えないくらい大笑いしながら色々な話をした。

いつの間にか閉店の時間になってしまい、
私たちは名残惜しそうに店を出て、駅へと向かった。

店から駅まで15分ほどかかる道のりの途中で、彼がそっと手を繋いできて、
私は中学生に戻ったみたいにドキッとした。
お互い何も喋らなくても、沈黙が心地よく思えた。


まだバイバイしたくない、そう思っていたけれどあっという間に改札前に着いてしまい、絡めていた指をそっと離す。
すると、背の高い彼が少しかかんで私のおでこにそっとキスをして、「またすぐ会いたいな」と優しい目をして微笑んだ。

それだけ言い残してホームへと去っていく彼の後ろ姿を見ながら、
私は真っ赤になった。
そして思わず顔がほころび、
分かれた後に完全に恋に落ちていることに気づく。


…と、こんな出会いから始まる恋がしたい。


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