お地蔵様に託した恋
華厳寺。
それは京都の嵐山付近に位置する、別名「鈴虫寺」のことである。
なぜこのような名前がついているかというと、365日書院内に約8000匹の鈴虫の音色が響き渡っているからだ。
そんなお寺までの急な階段を数十段登って真っ先に出迎えてくれるのは、わらじを履いたお地蔵様である。
このお地蔵様に「自分の名前、住所、お願い事を一つだけ」伝えると、いずれわらじを履いて家まで一生懸命願いを叶えに来てくれる、とのこと。
お願い事をする際にはまず書院内で黄色いお守りを購入し、
それを握りしめながらお地蔵様に願いを伝え、
願いが叶うまでそれを肌身離さず持ち続け、
いざ願いが叶ったらお地蔵様に感謝の気持ちを伝えると共にお守りを返却しに鈴虫寺を再度訪れる、
というなんとも面白い仕組みになっている。
この言い伝えを信じて、恋愛・受験・健康などあらゆる願いを叶えるべく、多くの観光客がこの寺を訪れるのだ。
ただし、お願い事は絶対に一つしか伝えてはいけないという暗黙のルールがある。
「痩せて可愛くなって、かっこよくて優しくて面白い彼氏ができますように!」なんていう願いは、真っ先にアウトだ。
欲張りな私にとっては残酷なルールだが、是非ともお地蔵様に願いを叶えてもらいたく、地雷男の遭遇率絶頂期にこの鈴虫寺を訪れた。
お寺に到着すると、まずは書院内で一人一つずつ配られるお茶と落雁を楽しみながら、方丈様のお話を数十分聞く。
ずっと座って方丈様の話を聞くのは若者にとっては正直つまらないだろうと思い全く期待していなかったが、これがもう面白いのなんのって。
まるで落語や漫才を見ているかのような面白さがありつつも、人生において大切にすべきことなどを、楽しく分かりやすく、じっくりと方丈様がお話ししていく。
鈴虫の音色に包まれながら、為になる話をたっぷりと堪能し、その心地の良い空気感に思わず顔がほころんでしまう。
話を聞くだけでも、「これはきっと最強なお寺だ、お地蔵様も願いを叶えてくれるに違いない」と心底確信できる。
話を聞きにいくだけでも価値がある、老若男女に勧めたいお寺だ。
**
いざ書院を出てお地蔵様を前にすると、
やはりお願い事がいくつも頭の中をぐるぐると駆け巡る。
一つだけ…一つだけ…と自分に言い聞かせた末、
「私にとってふさわしい人と幸せになれますように」とお願いした。
今思い返すと、「私にとってふさわしい人、って自分何様やねんwwww」というなんとも生意気な感じだが、当時の私はこの願いに全力を込めていた。
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8月26日に鈴虫寺でこのお願い事をして、翌日に友達とUSJへ遊びに行った。
長蛇の列の暇つぶしとして私たちはtinderを開き、画面に映る男性を適当に流し見していた。
そこで一人、プロフィールには何も書いていないが、写真の雰囲気と笑顔に惹かれた男性を見つけた。
顔がめちゃくちゃタイプな訳でもないが、温かい笑顔に引き込まれ、初めて自分からメッセージを送ってみた。
その日のUSJでの待ち時間も、帰宅してからも、その後2週間も、その人との連絡が途絶えなかった。
簡単に熱しやすい私は、画面越ししか会話をしたことのない彼に、ぞっこんになってしまった。
そして安直すぎるが故に、
「こりゃ間違いなく鈴虫寺効果だ!」と思い込み、翌月に早速鈴虫寺にお守りを返却しに行き、お地蔵様に深く頭を下げた。
自分、本当にバカ(笑)
お地蔵様もきっと、
「いやwwwwちょwwww早すぎwwwまだ全然叶えてないでwww」と思っていたに違いない。
もちろん、お地蔵様はまだ私の家まで願いを叶えに来ていなかった。
だって、彼は全然「私にとってふさわしい人」ではなかったから。
しかし、当時そんなことを知る由もない私は、
鈴虫寺に感謝しつつ、この男と付き合うことになる。
一緒に過ごした期間はたったの3ヶ月だが、ある意味思い出深かったこの3ヶ月の出来事を、次の記事で書いていきたい。
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