ギフティッド児の心をがっちりつかんだ凄腕先生(3)
やるべきことに向き合えない理由を考える
凄腕先生は、長男がやるべきことに向き合えない時、必ず「なぜできないのか」と理由を考えてくださる。
授業をよそに別のことに没頭してしまう事に加えて、長男が明確に参加したくないと意思表示する事についても、理由を考えてくださっている。
例3:やりたくないと意思表示する問題についての対処法
先生の分析では、長男は
① やる理由を考えた
② 結果、やる意義を見出せなかった(or 他のやり方の方が良いと思えた or 他のことをやったほうがマシと思った)
③ 納得していないので従うことができない
④ その結果として色々な行動のバリエーションが出てくる
のだろうとのことだった。
やりたくないモードになってしまうと、長男はなかなか切り替えができない。先生は「こだわり」という表現も使われていたが、人によっては全て反抗的な態度と捉えて罰することになる類のものだ。
ある日の家庭科で、長男が行きたがらずに、一人教室にぽつんと残っていたことがあったそうだ。先生が教室に戻ったらそこに長男がいたため、声をかけてくださった。
先生:みんながやってること、ドラは普通に出来てないよね?
長男:うん
先生:今、みんな移動教室から戻って来て後ろでわいわいやってるけど、ああいう輪に入りたいと思わないの?
長男:思うよ
先生:あ、思うんだ?どれぐらい思うの?1~10でいうと、どれくらいやりたいと思ってるの?
長男:7くらい
先生は長男の回答を聞いた時、驚いたそうだ。長男の言ったことが100%本心かは分からない。でも、本当はやりたいのにできない気持ちがあって、この子は生きづらさを感じていて、手助けが必要なんだと感じたそうだ。
そうなのかもしれない。本当は色々考えずにささっとみんなと同じようにやれたら本人も楽なのに、長男の脳は理屈を考えたり納得のいく理由を見つけようとしているうちに動けなくなってしまうのかもしれない。
(この件、長男は最初こそ家庭科に参加していたものの、お茶をコップに順番に入れる作法が嫌で参加するのを渋るようになってしまった。順に注ぐより、一度ボールか何かに入れて均一の濃さにすればよいのにと言っていた。そう言えば、作法は嫌いだ、縛られたくない、自由にやりたいと家でもぶつくさ言っていた。先生から参加できていないことを聞いてからは、夫がお茶の入れ方の歴史や、温度によって出る成分が違って味にも違いが出ること、紅茶と緑茶はどう違うかなどを調べて長男に教えていた。唐突にお茶の話なんかをしたので不信に思ったかもしれないが・・・。)
やはりこういったことの理解者が必要なのだろう。困っているんだ、手助けが必要なんだと気づいてくれて、手を差し伸べてくれる人が長男には必要だったのだと思う。
凄腕先生とゆっくり話せたりすると、長男の行動も変わるようだ。「直後の授業で、2時間続けてタブレットを触らずに授業に参加できました」といった報告ももらっている。長男なりに応えようと頑張ったのだろう。凄腕先生と出会ってから、親の長男を見る目や接し方も穏やかになった気がする。
先生のこういった指導方法に我が家は救われている。この先生に出会っていなかったら、今頃学校に行けていたかは分からない。転校も含めて色々なことを考えていた。
それでも長男にとって学校はまだまだ厳しい場所だ。凄腕先生の長男に対する指導については、学校内でももっと厳しく指導すべき等々意見があるらしい。それほどまでに目をつけられているのかと思うと恐ろしい。先生が頑張ってくれている中で、長男が応えていかないと・・・と何かあるたびに焦りを感じてしまう。
先生も正直に、クラスの中で一筋縄にいかないのが長男であるとおっしゃっていた。でも笑顔で良い意味でともおっしゃってくださった。
長男がこれからも凄腕先生のような素敵な人とたくさん出会えることを何よりも願っている。