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ボクノミコト。#5

『衝羽根朝顔(ペチュニア)③』


『テイは、いつ帰ってくるんですか?』と言うぼくの言葉に、その場にいた全員が黙った。ぼくは何か不味いことを言っただろうか?カスミさんは困惑した表情を浮かべながら、震える声で狼狽えている。

「あ、えぇと、燈華とうかね、うん、燈華は、すぐ帰って…くると…」

 桔梗さんは深呼吸をするとカスミさんの肩を持って、ぼく達を見据える。怖い。なんだか、この場から逃げ出してしまいたいような感覚になった。助けを求めるように煌華の方を見る。しかし、煌華は何かを悟ったような悲しい表情で畳を見ていた。なんだよ。ぼくだけが、何も知らないのか。

「燈華はね」

 桔梗さんの言葉に心臓が跳ねる。煩いくらいにドキドキと耳元で心臓がなっている。嫌な音だ。聞きたくない。

「亡くなったよ。半年前に」

 よく聞こえなかった。
 今、桔梗さんはなんて言った?
 亡くなったよ。半年前に…?
 半年前に?何が?
 燈華が?なんだって?

「なにいっt…」

 みんな畳を見つめ黙っている。…いや、いやいやいや、そんなわけない。何かの聞き間違えだ。

『燈華、今は家に居ないんだけど』
『あの子とっても明るくていい子だったから』
『燈華ともとっても仲が良かったのね』
『こっちに来てからの燈華はどんな感じだったんですか?』
『太陽みたいな子だった』

 なんでみんな過去形で話してたんだよ。
 今もでしょ?今もテイは、テイはイザの命呼執であんな笑顔で……あれ、でもここ最近のイザの思い出に、あれ。今まで感じたあの違和感の正体なんて知りたくない。待って、待って、待って。ぼくは手に持っていたイザの命呼執を勢いよく開く。いるはず、いるはず、絶対…。ページを捲っていく。
 しかし

「あ、れ……?」

 あるページからパタリとテイが映らなくなった。わしゃわしゃとイザを撫でているテイ。途端に視界がぐにゃりと歪む。いやいやいやいや、そんなわけない、テイが、人一倍明るくて、優しい燈華が、死ぬわけない。えぇと、だから、えと、なんだっけ。何考えてたんだっけ、何しに来たんだっけな。あ、そういえば高校で生徒会に入ったんだってテイに言いたかったんだよね。そう、テイに会いに来たんだから、テイに会わないと帰れないじゃん。そういえばお昼に食べたエビフライ美味しかったな。
 目がおかしいな。なにこれ、涙?あぁ、そっか泣いてたんだった。なんで?
 その時隣からドンッという振動が体に響いた。

「あぇ…?」

 見ると煌華おうかがぼくに抱きついている。煌華は、泣いている。煌華を見てからくちなしさんたちの方へ視線を向けると、二人とも泣いている。

 あぁ、そっかテイは───。

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