ラーメン屋で呑む愉しみ
君はラーメン屋で呑む派か?
と、唐突に尋ねられたので、もちろん、と思わず答えると、いい度胸だ、と褒められた。
知らない人に話しかけられることが、たまにあって、それは私が独特の隙を見せているせいかと思っていたが、私が単に他人の顔をよく見る、という理由だと最近気づいた。
なんの意味もなく、私は人の顔を、感情を全く入れずに見続けてしまうことがある。
そら、知らない女がじっと見ていたら怖いし、何か用かと話しかけてくるのも頷ける。私は危害を加えるつもりは全くないし、なんなら人と話すことは嫌いじゃないからむしろ歓迎だ。
ではこちらへいらっしゃい、とその人は私を連れてどこかへ歩いていく。
怪しい雰囲気が若干あるものの、悪い人ではなさそうなので、ついていくことにする。
ちょうど暇を持て余していたところ。
ラーメンで呑む大人こそ、信頼できる大人だ。
と、その人は続ける。
なぜそうなのですか、と聞いてみるが、それには答えてくれない。
実に勝手な人である。
しばらく歩くと路地裏に入り、人通りもあまりないところにやってきて、やや不安になってきたところにそのラーメン屋があった。
躊躇なく、その人はラーメン屋に入り、私を見て言う。
まずこれ、食べてみて。
ラーメン屋の店主は何も注文もしていないのに、小皿を出してくれた。
メンマ盛り、であった。
私はそれをつまんで食べる、同時に運ばれてきたのは瓶ビールで、その人が注いでくれたので遠慮なく呑むことにする。
メンマ盛りと瓶ビールは今の私にぴったりの品であった。