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5.母の一日 - 家事、育児、仕事の三重奏

青森の朝は冷たい風が窓を叩く音から始まる。佐藤家では、その風の音に負けじと賑やかな声が響く。

“お母さん!靴下どこ?”

“ご飯まだー?”

“今日は弁当忘れないでね!”

母の志保は、時計をちらりと見ながら手を動かし続ける。午前6時、7人分の朝食と5人分の弁当を同時に準備するのは、一種の技術だ。トーストを焼きながら、味噌汁の味を確認し、卵焼きをフライパンから取り出す。このすべてが、もう何年も続けてきたルーティンだ。

朝の戦場

長男の拓海は中学三年生。弟妹たちをまとめるリーダー的存在だ。

“拓海、お兄ちゃんなんだから、光希のランドセルも確認してあげて。”

“分かった。でも、翔太が宿題のプリント忘れてる。”

長男の報告に、志保は眉をひそめる。

“翔太!昨日の夜に確認したでしょ?早く探してきなさい。”

次男の翔太は、急いで自分の部屋に戻る。志保はその間に、三男の健太が靴を逆に履いているのを見つけて直す。こんな忙しい朝も、子どもたちが学校へ元気に向かう姿を見ると、一瞬だけ安心できる。

仕事モードへの切り替え

子どもたちを送り出すと、志保の次の役目が始まる。志保は自宅でオンライン教室を運営しており、パソコンを開くと同時に仕事モードに切り替える。

“おはようございます!今日もよろしくお願いします。”

画面の向こうには、生徒たちの顔が並ぶ。ITスキルを教える教室は、志保が家事や育児をしながらも社会とつながる貴重な時間だ。1時間の授業が終わるころには、家事の続きをこなすためのリストが頭の中に浮かんでいる。

昼食と買い物

午後に入ると、志保は買い物リストを手に近所のスーパーへ向かう。青森に来てから、地元の新鮮な野菜や魚を使った料理が日常になった。子どもたちの成長期を支えるため、食材選びには手を抜けない。

帰宅後、軽く昼食を取ると、洗濯物を干したり、掃除機をかけたりと家事が続く。一息つく間もなく、午後の授業の準備が始まる。

放課後の嵐

夕方になると、学校から帰ってきた子どもたちが一斉に家に駆け込んでくる。

“お母さん、今日サッカーでゴール決めたよ!”

四男の光希が嬉しそうに話す。その隣では、長女の彩音がランドセルからプリントを取り出して見せている。

“これ、学校からのお知らせだって。”

志保は一人一人の話を聞きながら、夕食の準備に取り掛かる。今日は子どもたちが大好きなカレーライスだ。彩音と次女の美咲も手伝いに入り、家族全員で食卓を囲むころには、ようやく一日の疲れを忘れられる。

夜の静寂と再びの忙しさ

夜8時、子どもたちがそれぞれの部屋で宿題や遊びに夢中になっている間、志保は翌日のスケジュールを確認する。家計簿をつけ、子どもたちの学校行事や習い事の予定を把握するのも母親の役目だ。

そして夜10時、家の明かりが少しずつ消えていく中、志保は一人リビングで深呼吸をする。

“今日も何とか乗り切った。”

康太が帰宅する音が聞こえると、二人で短い会話を交わし、その日一日の感想を語り合う。この瞬間だけは、家族のリーダーとしてではなく、一人の妻としての時間だ。

明日へ向けて

志保は、子どもたちの寝顔を見に行く。7人それぞれの顔には、一日を駆け抜けた満足感が漂っている。その姿を見るたびに、彼女は自分の役割の大きさを改めて感じる。

“よし、明日も頑張ろう。”

青森の静かな夜が、佐藤家の新しい一日への準備を見守っている。


この小説は、妻が日々のストレスを軽減するために実践しているピラティスのクラスから着想を得ました。青森発のオンラインピラティス『Manycent』では、特にお母さんたちが心身の健康を取り戻すサポートをしています。ぜひ一度体験してみてください!


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