
ブッダ・心のことば ウダーナ第1章8 わかりやすい版
1 菩提の章
1.8 サンガーマジの経(8)
来るひとを喜ばない
去るひとも悩まない
戦のしがらみから自由になった
この人こそ、かしこいひとという
あるとき、お釈迦様はサーヴァッティーに住んでいた。
ジェータ林のアナータピンディカ長者の聖園にサンガーマジがいた。
サンガーマジの前妻は、幼児を抱えてジェータ林へやってきた。
サンガーマジは木の根元で坐っていた。
サンガーマジの前妻はサンガーマジ、にこう言ったのです。
「小さな子供がいるのよ、ちゃんと面倒みてよ」
こう言われてもサンガーマジは黙っていた。
そこでサンガーマジの前妻は、わが子を、サンガーマジの前に置き去りにして立ち去りました。
サンガーマジは、わが子を見ることもなく、あやすこともなかった。
サンガーマジの前妻は振り返り、サンガーマジがわが子を見ることもなく、あやすこともないのを見て、気づいたのです。
「このひとは、わが子でさえも、あやさない」
すぐにふりかえり、わが子を抱えて立ち去りました。
お釈迦様は神通力で、サンガーマジの前妻のようすを、見ていた。
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解 説
サンガーマジは、「束縛から戦で勝った人」という意味です、我が子に対する執着を戦に例えたストーリーなので一見すると激しいものになります。それだけ出家の修行者というものは、なにものにも動じない大変に厳しい覚 悟が必要というお話。
禅宗には自らの腕を切り落として達磨大師に弟子入りを願い出た慧可の話も伝わっています。
ウダーナとは
ウダーナはパーリ経典・クッダカ・ニカーヤ(小部)に収録されている経典です。
太字の詩文については、お釈迦様のことばのままを、もっとも伝えている経典と言われています、誰に教えるためでなく、お釈迦様が『心のまま』に口にしたことばを集めた経典です。
詩文に続き後の人々が、いつ、どこでや編集当時の教えを付け加えたエピソードなどが散文で記されています。