黒龍という化物鯨
最初にお断りします。
この「黒龍」と呼ばれる化物鯨は、実在したものではございません。
房州日日新聞連載中の作品「真潮の河」に登場する、江戸湾の勝山沖を時として脅かす化物のように狡猾で残虐な悪魔の鯨。
烏合の衆だった勝山の漁師を結束させるために生み出した、創作上の敵役です。
「どこいらへんで暴れていたのですか」
という質問を頂いたことがございますが、どこでも暴れておりません。強いて云えば、ネタに詰まって夢酔の頭の中で暴れ狂っていたくらいです。
読み方が分かりませんという質問も貰いましたし、意図せぬ読み方で呼ばれましたが、否定はしませんでした。でも、反応があるというのは、有難い事なので、オフィシャルとしてこう読みましょう。
黒龍
こくりゅう と。
里見作品連載中は、房日といえば山鹿先生という挿絵のイメージができました。しかし、今回は(頼朝伝からですが)挿絵ナシですから、読者ひとり一人のなかにイメージがある。
龍のような鯨……抽象的ですが、海の男たちも小便ちびって逃げ出した悪魔に立ち向かうためには、結束しかない。
醍醐新兵衛の時代にこれをやると、史実的にも何かと間に合わなくなる。急に組織捕鯨になるのは不自然ゆえ、父の代からの黎明を設けています。
じゃあ、初代はオヤジじゃん。
そう云われないよう、組織ではなく結束に留めたのです。これが後々の代替わりで、地域の意識改革につながっていければ、ダークヒーローである黒龍もいい役回りとなる……。
いまが、そのときの始まり……!
しかし、ただの狂言回しで終わらせるには惜しいのも、黒龍。
その正体は恐ろしき、本当の魔性である方向に用いたいのですが、種明かしにはまだ早い。
なぜならば、Wキャストの醍醐新兵衛・菱川師宣ともども、世にまだ何も成していないティーンエイジャー。二人が世に活躍する物語さえ始まっておりません。
まだまだ、内緒のネタです。
早春の鋸南町。
いま、いちばん心躍る海街です。
……白鯨に対抗したのかって?
そういうわけでは、ございませんよ……たぶん。