黄線地帯(1960)
黄線地帯(1960、新東宝、79分)
●監督:石井輝男
●出演:天知茂、吉田輝雄、三原葉子、三条魔子、大友純、沼田曜一、吉田昌代
石井輝男監督、新東宝「ラインシリーズ」の作品。一度観たことあったけど、シネヌーヴォにて鑑賞。
組織に裏切られた殺し屋・衆木(天知茂)と、彼に拉致された踊り子のエミ(三原葉子)を追跡する、事件記者でエミの恋人の真山の3者にスポットを当てながら、外人専用の売春”イエローライン”に纏わる事件の顛末を描く。
さりげなくクレジットが横書きなのがカッコいい。
屈折した過去を持つ天知茂に対して、真面目であまり面白みのない吉田輝雄とを比較すると悪玉の天知茂のほうが主人公のようだ。
やたらシリアスな二人の男の間にいる三原葉子があっけらかんとした明るさで映画に灯りを点してくれる。
ホテル(連れ込み宿?)のマダム、従業員兼娼婦のケイコ、洋モクババア、タイピストの弓子(劇中の”給料娘”というワードが凄い)、洋モクを吸う娼婦、黒人ムーアなどチョイ役含めて女性陣が皆キャラが立っていて良い。
『続網走番外地』の毬藻とかもそうだったけど、本作でもエミのハイヒールとか「殺人犯です。助けてください」と書かれた百円札とか小道具の使い方が面白い。
百円札は神戸の靴屋で新しいハイヒールを買う際に使われ、その直後に弓子が来店しお釣りとしてその札を受け取る。
弓子がイエローラインに拉致された際にヘルプサインとして車から投げるとそれがパイラーの政に拾われる。
それが洋モクババアに渡り、さらに煙草を買った真山へお釣りとしてようやくたどり着き衝撃を持ってエミのメッセージを受け取ることとなる。
その直後のシーンでは今度は衆木が洋モクババアから煙草を買い、その煙草をエミに投げ渡すも、「男の人の親切は怖いな」と言われながらそれをポイっと返されてしまう。
このシーンでは洋モクババアを媒介としてメッセージを受け取った真山と、間接的に拒否された衆木という構図にも見える。
下からのあおりショットの多用や、エンディングの追走劇での超絶スピーディなカット割りなどもスタイリッシュ。
何よりも神戸のカスバと言われる舞台セットが奇怪で異国感溢れる雰囲気が独特。
ミイラという名前のコンセプトバーもあまり本筋関係ないけどかなり気合入って作りこまれている。
パイラー(呼び込み)、ヤサ、地回り、あきめくらとかは分かったけど、「麻薬の3号」って何のことなんだろう?