仔象は死んだ(1980)
仔象は死んだ(1980、安部公房スタジオ、54分)
●音楽・脚本・監督:安部公房
●出演:山口果林 、伊藤裕平 、岩浅豊明 、条文子 、寺田純子 、八幡いずみ 、平野稚子 、塩田映湖 、佐藤正文 、加藤斉孝 、沢井正延 、金学隆 、垂木勉 、藤原俊祐 、大塚洋 、綾城明
「部屋の中の象」という慣用句がある。
誰もがその存在に気付いているのにあえて見ないふりをしている重要な問題のことだ。
では「夢の中の仔象」だとしたら、どうだろう?
この安部公房スタジオ制作の、映像化された前衛演劇を理解するのは非常に困難だ。
唯一の合理的な解釈は、すべてが夢の中ということ。
様々な形に変る大きな布。そして布をまとった女たち。
仮面をかぶった男たち。
言葉を失くした男。
手と足が逆になった男。
貝殻草によって魚になった夢を見る話は『箱男』のノートにも登場。もしかしたらこれは箱の中で見た夢?
「弱者への愛には、いつだって殺意がこめられている」は『密会』からの引用。
終盤のバドミントン的な遊びやレスリング的な遊びは、オリンピック反対派の安部公房がまるでスポーツをちゃかしているみたいだった。
「演劇の映像化」という元々が映画的方法論に基づいていない作品だし、ここまで理解不能だと、理解できなくて普通だろうと思えるので「映像詩」という得難いジャンルの鑑賞体験ができたんだなという奇妙な気持ち。
安部公房ファン以外は観ていて苦しくなると思うが…
『時の崖』との併映。
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