エッセイ : 欧州で食べた朝ごはん 4 / 家の白壁は主婦の誇り 最初にフルーツをたくさん食べるアンダルシアの朝ごはん
僕は新婚旅行で奥さんとアンダルシア地方を中心にスペインに行って来た。
ポルトガルのリスボンからバスでスペインのアンダルシアに入った。
セビーリャで本場のフラメンコを見て、コルドバでメスキータと世界一のひまわり畑を見て、グラナダでアルハンブラ宮殿を見学した。
バルセロナとマドリードに向かう前に、マラガと呼ばれるリゾート地に2日間滞在してゆっくり過ごすことにした。
マラガはコスタ デル ソル(太陽海岸)と呼ばれる
美しい海岸線沿いにあった。
アンダルシアの家は全て白壁に茶色の屋根の家。
その家がある所ではイスラム様式が残る建物の周りに密集して建っていたり、ある所ではひまわり畑のなかに点在して建っていた。
家によっては白壁に鉢植えの花をかけて飾っていた
マラガでは海岸線に建っていた。
紺色に近い青い空の下、地中海の青い海の側に白壁に茶色の家が並ぶ景色に僕たちは見惚れていた。
アンダルシアに入ってセビーリャを出て、僕たちはバスの中から、その家の奥さんが家の壁を白く塗っているのが見えた。
マラガに入る前、バスが休憩のために停まったトイレのあるカフェからも、その家の奥さんが一生懸命家の壁を白く塗っているのが見えた。
僕も奥さんも、どうして旦那さんがやらないのだろう? と思った。手伝ってあげてもいいのにとも思った
マラガでまだ少し水が冷たかったが、奥さんと記念に地中海に入り、その後ビーチで飲み物を買い、椅子に座りゆっくりと過ごした。
途中でおじいさんが小さな男の子を連れてビーチに来て、釣り竿を取り出して、その男の子に釣りの仕方を教えていた。
マラガのホテルのレストランで、イカ墨のパエリアがあったので注文した。奥さんとお互いに、お歯黒になってる〜、と笑いながら美味しく食べた。
食後の珈琲を持って来てくれたレストランの女の人に壁を白く塗っている奥さんを見たという話をすると、その女の人はこう教えてくれた。
〈レストランの女の人の話〉
家の壁は石灰で白く塗るのですが、実はこれ、その家の奥さんの仕事なんです。
だから、家の白壁が薄茶色く汚れていると、
まったくあの家の嫁は〜、みたいに言われてしまうんです。
ここアンダルシアでは、家の白壁は主婦の誇り、と言われています。
翌朝、朝ごはんを食べにホテルのレストランに行った。ビュッフェスタイルの朝食を、もう何人もの人たちが食べていた。
アンダルシアに来てから、日本と逆だと思っていたことがあった。日本では食後にフルーツを食べるが
アンダルシアの人たちは、最初にフルーツをたっぷり食べてから、温かい料理を食べ始めていたことだ
僕たちが料理を取り始めようとすると、30代のご夫婦と男の子と女の子がお皿にフルーツを取り始めた。僕は英語で旦那さんに話しかけ、日本では食後にフルーツを食べると言った。するとそれを聞いていた奥さんがニコッと笑ってこう教えてくれた。
〈レストランで会った奥さんの話〉
スペインではフルーツは身体に1番良い食べ物と言われています。特に朝食べるのが1番良いと。
ここアンダルシアは暑い地域です。朝起きると喉が渇いています。すぐに水を飲むのではなく、フルーツを食べて喉の渇きを潤しましょうということなんです。それに暑いと最初から温かい料理を余り食べることが出来ません。冷たいフルーツを食べると食欲も出て来ます。
僕たちは、最初にフルーツを食べてみることにした
朝最初にフルーツを食べると美味しい。お皿にたっぷりとフルーツを取ったのに、どんどん食べていけた。奥さんはフルーツだけでお腹がいっぱいになりそう、と言っていた。
ところがフルーツを食べて少しすると空腹を感じて来た。そしてトーストと温かい料理をいつもの様に食べることが出来た。
僕たちはもう1日マラガてゆっくりと過ごし、翌朝もう一度フルーツたっぷりの朝ごはんを食べて、
次の目的地バルセロナに向かった。
飛行機が飛び立つ前、奥さんにアンダルシアで印象に残っていることの1つは、その家の奥さんが家の壁を一生懸命白く塗っていた姿だと言うと奥さんは「私は分かるけど、男の人には、家の壁を一生懸命白く塗る奥さん達の、本当の気持ちは分からないと思う。分からなくていいんだけどね。」
と言って微笑んだ。
僕は飛び立った飛行機の窓から、もう一度アンダルシアを見た。そして、いつかまたここに来る、そう思った。
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