恋愛エッセイ : 思い出はあなたが失った全てのもの(ポール サイモンの言葉)
珈琲をひとりで飲んでいる時、僕は考えごとをしていることが時々ある。
今日、ランチを食べていたお店でBGMで懐かしい曲が流れた。
サイモン&ガーファンクルの
サウンド オブ サイレンス(静寂の音)だった。
静寂を音とは、ポール サイモンらしい哲学的な曲名だと思う。誰でも1度は聴いたことのある曲で、
ダスティン ホフマン主演の映画 卒業にも使われた曲だ。
僕はサイモン&ガーファンクルを中学の時に聴いていたが、曲名が思い出せないのだが、ドキッとした
歌詞を思い出した。その歌詞とは
思い出はあなたが失った全てのもの
という歌詞だ。
ポール サイモンが言う通り
思い出は失った全てのものだと思う。
確かに、例えば恋人同士なら、ふたりで継続している思い出というものはあると思う。
だが、ふたりが初めて出逢った時のときめきとか
初めてキスした時の気持ちとかは、もう経験出来ないものだ。
つまり、過去になってしまった思い出というものは
全く同じ体験も感動も悲しみも経験することが出来ない以上、失ったものになると思う。
先日、会社の人とレストランで夕食を食べていた時
近くのテーブルにいた地元の大学生の女の子たちが
「大学時代に沢山いい思い出を作ろう。素敵な恋の思い出を作ろう。」
と話していた。
気持ちは分かるが、
そもそも思い出とは、作ろうと思って作るものなのだろうか? と思う。
僕は、一生懸命生きて来て、何処かの時点で過去を振り返った時、自然と出来上がっているものが思い出だと思う。
いい思い出だろうが、楽しい思い出だろうが、悲しい思い出だろうがだ。
作ろうと思って作ると、意図的なものになってしまい、本当の過去と本人が思っている過去に大きな差異が生じてしまうこともあると思う。
それに、失ったものになるものを、作ろうとするというのも矛盾する気がする。
少なくとも僕は、何処かの時点で過去を確認し、
未来に向けて軌道修正するのが、思い出の1番の
役割だと思う。
だから僕は、思い出を重視する生き方や思い出を
作ろうとする行為には賛成出来ない。