ESくん
突然「お金」のことが気になってあらためて調べてみてるけどお金って、
人間が発明した人工物のなかでも断トツに化け物な発明品なんじゃないかと思うね。
匹敵するのはやっぱり「言葉」かな。
網口渓太
資本主義の世界まで築いてしまっているんだから、破壊的イノベーションだよね。あと家では千葉さんにならって「享楽」も付け加えたいかな。こだわり、界隈ね。お金のことも言葉のことも、考えない日はないよね。
ESくん
素人目にみても、たとえば万札の一万円という価値をみんなに認めさせて、商品と交換できるようにしてしまった怪物感が伝わってくるよ。この『談』の平川克美さんのインタビュー面白くて。
網口渓太
ナイスアシスト。GAFA が有名だけど、特定の個人や団体が、資本を独り占めしてしまっているし、この構図はまだしばらく続くと言われているよね。たとえば、ビル・ゲイツの給料を時給に換算すると2億らしい。これは、日本人一人の生涯年収とほぼ同等の額だよ。
ESくん
えぐっ。
網口渓太
逆に日本人の年収は下がっているしね。ファストファッションとかチェーンの飲食店のように高品質低価格の商品が広まったことで、最低限の生活の水準も下がっているから。イノベーションの結果社会が豊かになっている反面、勝ち組と負け組というレッテルが貼られ、貧富の格差が問題になっている。どうするべきなんだろうね? この本のテーマでもあるし、贈与経済のことがよく分かる部分の引用もしておこうか。
EMちゃん
交換経済が兎ちゃんなら、それ以前の全体給付の仕組みは亀ちゃんね。
(→6-1)
ESくん
たしかに。“心の底から安心できる感
覚”から遠くなるわけだ。毎日ご飯を食べられるという安心は万人に与えられるべきだよ。
EMちゃん
やっぱ、岡崎京子さんよ。
ESくん
京子さんの描く主人公ってみんな、たしかになんか生き急いでいるよね。
網口渓太
「すべての仕事は売春である」か。資本主義から岡崎さんに飛躍するハイコンテキストな感じがいいねぇ。
岡崎さんのマンガは、無駄が削ぎ落とされた線を使って描かれる絵のセンスはもちろん好きなんだけど、半径3メートルの身近な問題も、世界や時代というような大きなスケールの話も考えさせられるから、われわれの読書の傍にいつもいる存在だね。問題意識を持つための貴重な資料でもあるし、家に一番積まれている本の著者でもある。
ESくん
山田玲司さんのYouTubeの動画が分かりやすかったんだけど、岡崎さんが
1983年に20歳の人であることがキーポイントで、それはどういうことかと言
うと、高校時代に70年代後半を体験した80年代の人であると。70年代は金八
先生と欽ちゃんがテレビを席巻していて、「人というものは」とか、「家族」とか内面がテーマだった。でも80年代にこの内面性が壊れる。そして全てが表層化する時代になっていったと。「巨大な虚空を心に抱えたまま、生きていかなくてはいけない世代」ってね。確固たる居場所も主張もなく、孤独で残虐。同じ年には、吉田戦車、上條淳士、野島伸司、新井英樹、今敏、すぎむらしんいち、スティーブン・ソダーバーグがいる。なんか、カッコいくない、クールやでこの時代の人たち。
EMちゃん
亀ちゃんの時間にも、資本が絡んでいるから、やっかいなのよ。休日の余暇にも家族との団欒の時間にも、いつもお金の悪魔がささやいてくる。
ESくん
平川さんもこの本のなかで山田さんと同じ視点で語られてるね。
網口渓太
一回目にやったけど、やっぱり「SFプロトタイピング」だな。あとは方法。
ESくん
相手は怪物だから、お金に振り回され過ぎないように気を付けないとね。
あとは、歴史と年表と地図の三種の神器を携えて、時代とともにバラバラになってしまっている価値観をもう一度編集してみる必要がありそう。
EMちゃん
そうねぇ。じゃあ今日はワタシが作ってあげるわね、一汁一菜。おナスと
玉ねぎとインゲンとお揚げさん。全部地元のものよ。腹拵えしたらまた再開しましょう。