バナナブレッドを焼くたびに、意見が割れる夫婦
たまにお菓子を手作りします。
わたしを料理へ走らせるのは、完全なる食欲です。おまけとして、無添加がいいとか、子どもと一緒にできるアクティビティになるから、なんていう理由もありますが、基本は食欲です。
先日、キッチンのカウンターの隅で、バナナ2本が黒くなって鎮座していました。完熟を通り越して、過熟です。この数日間、誰にも振り向かれず、話題にものぼらず、その場に放置されていました。
なんとなくそれを触るのが面倒くさくて、気づかぬふりをしていました。でも、あるとき、ようやくスイッチが入りました。
そうだ、バナナブレッド、作っちゃおう。
頭にバナナブレッドを思い浮かべたら、俄然食べたくなってきました。
これまで、何度も作ったことがあります。完熟バナナがあるときは、バナナブレッドに限ります。材料を順番にボウルに入れて、混ぜて、焼くだけ。初心者にも簡単にできて、失敗しにくいのがいい。
わたしは、サクサクと工程を進めて、オーブンに入れました。
タイマーが鳴って、オーブンを開けると、いい匂い。むわっと温かくて、バターの香りのする空気が、一気に流れ出てきました。バナナブレッドは、中央がぱかっと割れて、見た目もいい感じにできあがっています。
これは期待できそうだ。
粗熱をとってから、早速味見をしてみました。
砂糖をちょっと減らして、その分レーズンを加えたのだけど、わたしには程よい甘さでちょうどいい。サクッと軽くて、ぱくぱく食べられる。
匂いにつられて寄ってきた子どもたちにも、スライスして分け与えました。牛乳と一緒に出してやると、「ん~」といっぱしの感嘆の声をあげて味わいながら、ペロリと平らげました。
後で、夫にも勧めました。夫は、品定めするような目で、バナナブレッドを見つめます。
「オッケ。もらうよ」
切り分けたスライスを、一口食べて、もぐもぐと咀嚼しています。無言です。
「どう?」
なんか言いなよ、という気持ちを込めて、聞きました。すると夫は、味のことには一切触れずに、
「日本のレシピで作ったの?それともアメリカの?」
と質問してきました。言外に、日本のレシピで作ったでしょ?と言っています。わたしはそう言うだろうなと思っていたので、やっぱりそう来たか、と思って笑いました。
どういうことかというと、日本のレシピは、概して、アメリカのスタンダードよりも砂糖とバターが少なめなんです。甘さ控えめの、軽い仕上がりになります。
一方、アメリカのレシピで作ったバナナブレッドは、がつんと甘くて、バターのコクもたっぷりに出来あがります。もちろん美味しいです。食べ応えもあります。でもその分、カロリーも脂肪分もコレステロールもしっかりついてきます。
夫は、断然アメリカのレシピ派です。どうせ食べるなら、ちょっと物足りないけど若干健康によいものよりも、たまにでいいから、文句なしに美味しいものを食べたいそうです。食にこだわりがあって、自分でも料理をします。
一方、わたしは、断然日本のレシピ派です。わたしにとっては、アメリカのお菓子は甘すぎるんです。レシピどおりに砂糖を入れようとすると、幼児の砂遊びを連想してしまうくらいです。砂糖だけで小さなお山ができちゃう。バターも、これだけの量をいまから体に放り込むのか…と考えると、ゾッとします。
外で買うお菓子は、こういうのが見えないから、ぱくぱく食べられるんですよね。見てしまうと、食べるのが憚られる。
そんなわけで、わたしはいつも日本のレシピで、砂糖とバターを控えめに作ります。夫からの評判はいまいちですが、考え方が違うので、ここは仕方ありません。
夫は夫で、自分の食べたいものを自分で作っているので、これでいいのです。
読んでくださってありがとうございます。
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