【アメリカ】マクドナルドのスマイルより強烈に客の心を鷲づかみにした一言
先日、ちょっと事情があって、息子だけ遅れて学校へ向かうことになった。
車で送っていく途中、息子がマクドナルドへ行きたいと言い出した。なにを言ってるんだ、これから学校へ行こうというときに。
ただ、その日はお弁当を作る暇がなくて、学校のカフェテリアで買って食べることになっていた。そのことがぱっと頭に浮かんで、
「ランチ替わりに買って持っていく？」
と提案してみた。息子は、驚きを禁じ得ない様子でわたしを振り返った。ぼた餅が頭に直撃した瞬間だった。
「いいの？？？！うん！！！！」
息子は、力いっぱいに返事した。
アメリカでは、お昼のお弁当に、ファストフードのテイクアウトを持参する子がいる。もしくは、お昼の時間に親が買って届けにくるパターンもある。
それがどれくらい普通のことなのかは、わたしもよくわからない。でも、息子の言いぶりから察するに、そんなに珍しいことではないようだ。
それを、息子はいつも「イイなあ～」と指をくわえて見ていた。でも、わたしに頼んでもどうせ聞き入れられないだろうと踏んで、言い出さなかったらしい。
それが、今日はどんな風の吹き回しか、ママから提案してくるなんて。明日は雨と雪と風が勢ぞろいして警報レベルでやってくるんじゃないかという騒ぎである。
子どもにはできるだけ健康にいいものを食べてほしいというのが基本にあるが、まあたまにはこういうお楽しみがあっても罰は当たらないだろう。でも、本当にたまにのこと。というか今回が初めてだ。
向かった先は、学校から近いファストフード店 "Chick-fil-A"。チキンサンドイッチが人気の店である。
そこで、チキンサンドイッチとポテトフライを頼んだ。生意気にも、息子はもうキッズメニューは頼みたくないらしい。
注文を確定して、備えつけのクレジットカードの機械でお金を払っていたら、レジのお姉さんがわたしに視線を向けてこんなことを言った。
「あなたの顔、きれいな形してるわね」
わたしは彼女の思いがけない一言に、頭の中が一瞬バグった。
顔の形なんて褒められたことがない。いきなりなにを言い出すんだこの人は。
「わたしに言ってる？」
思わず、間抜けなことを聞き返してしまう。彼女の目の前にはわたししかいない。彼女はわたしに言っているのだ。
他人の顔の形に目が留まるだけあって、彼女は身だしなみやおしゃれには気を使っている雰囲気があった。はっきりとした顔立ちにくっきりと表情が際立つようなメイクをしていて、緩く波打つウェーブの髪はきちんと整えられていた。
「ありがとう」
ようやく体勢を立て直し、わたしはにこりと笑って返事をした。本当に、わざわざ言ってくれてありがとうという気持ちだった。
「あなたのお陰で、今日は気分よく過ごせそうだわ」
そう言うと、彼女もにっこりと笑ってくれた。
マクドナルドのスマイルよりも、よっぽど強烈に客の心を鷲づかみにする一言だった。
（おわり）
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