【読書】『星を掬う』町田そのこ【2022年本屋大賞ノミネート】
2022年本屋大賞ノミネート作品8冊目は、『星を掬う』(町田そのこ 著)です。
主なテーマは、母娘関係です。読むのが辛くなるような場面もありましたが、読み終えたときには一筋の希望も見えました。
千鶴たちの共同生活
パン工場で働く30歳手前の千鶴は、元夫に追い回され、お金をとられたり、暴力を振るわれたりすることに苦しんでいました。
千鶴は幼い頃に母が家を出て行き、父と祖母に育てられたという過去を持っています。小学1年生の夏休み、母は千鶴を連れて旅に出て、1か月ほど一緒にたくさんの楽しいことをした後、家を出て行きました。
元夫からの暴力に追い詰められる千鶴は、ラジオに母との夏の思い出を投稿したことをきっかけに、母との再会を果たします。
千鶴の母は若年性認知症を患っていました。千鶴と母、千鶴の母が親代わりとして世話をしてきた美容師の恵真、母の世話をする彩子らとの共同生活が始まります。
自分の人生は、自分だけのもの
千鶴も母も、恵真も彩子も、抱えているものが大きすぎて、読んでいて苦しくなりました。相手を大切にしようとして逆に傷つけてしまう姿を見て、悲しくなりました。
私は母と仲が良く、いわゆる「お友達母娘」「一卵性母娘」だと思います。それが良いとか悪いとか論じるつもりは全くありません。私は母との今の関係に満足していますが、たまたま相性が良かったというだけで、それ以上でもそれ以下でもないのでしょう。
母娘や夫婦といった関係においても、「自分の人生は、自分だけのもの」という軸を見失ってはいけないことが、力強く伝わってきました。
現実はもっと残酷なのかもしれませんが、私はこのお話の最後の場面が好きです。温かい気持ちになり、千鶴も母も、恵真も、彩子も美保も、皆が幸せを掴めますようにと心から思いました。
昨年の本屋大賞受賞作である『52ヘルツのクジラたち』もそうでしたが、明るくない現実を、優しい目線で包み込んで描くような作品です。ぜひ手に取ってみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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2022年本屋大賞ノミネート作品の感想はこちら↓
昨年の本屋大賞受賞作『52ヘルツのクジラたち』の感想はこちら↓