20世紀美大カルチャー史。「三多摩サマーオブラブ 1989-1993」第19話
衝撃のクラブ・クアトロ・デビューライブを終え、再び練習スタジオに集結した我々は、「おお、今年も芸祭出ようぜ!」と話がまとまった。
すでに我々のバンドは
「うちの美術大学で岩石一家知らなきゃモグリ」
という存在になっていた。
バンドの一学年下の現役学生メンバーを通してアプローチすると、あっさり「最終日のトリ」が決まった。
思えば2年前、一般学生として「ヌマサワ&スター軍団」を下から見上げていたのが、立場は変わって「大御所」としての御登場である。
かくして、1991年11月3日午後8時、我々岩石一家は「芸祭野外中央ステージ」に再び登場した。
屋外ステージの客席はパンパンの超満杯。
冷え込む三多摩地区の晩秋の夜に、熱いスポット・ライトを浴びながら珠玉のファンク・チューンを連発すると、客席は大フィーバーである。
そして、この日に向けて我らがバンドが設定したテーマは「ウッドストック」。
野外中央ステージを1969年の伝説の野外フェス「ウッドストック」に見立てて、スライ&ザ・ファミリーストーンの「伝説のライブ」を再現した。
私はスライへ捧げた真っ白のパンタロン姿で、
「いいか!ベトナムで戦ってる友人のために!(そんなの居ない)、丘のずっと向こう側も!(丘なんか無い)、一緒に歌うんだ!」
「Wanna Take a Higher!!!」、「Higher!!!」
「いいか、「Higher!!!」と言いながらピースサインを掲げるんだ!もう一回行くぞ!」
「Wanna Take a Higher!!!」、「Higher!!!」
満員の観客の大合唱である。
こんな気持ちのイイ経験はそうざらには無い。
大フィーバーで中央ステージを終えると、メンバーとつるんで夜中の模擬店を回った。
すると「軽音楽部の模擬店でライブやってくれ」とのことだった。
急遽メンバーを呼び集めると、深夜の模擬店のステージに上がった。
屋外ステージの狂熱とは打って変わって、「ミッドナイト」仕様のクールなファンクを奏でると、どんどん客が集まってきた。
たまたまそれを観ていた音楽イベンターが「是非ライブに来てくれ!」と連絡先を訊いてくるほど素晴らしいライブであった。
(なんとか間に合ったな、、、)
と、私は2年前の「ステージ下から眺めていた一般学生」時代からの成り上がりに酔いしれていた。
こうして、「ファンクの帝王」として母校に帰還した芸祭の夜は更けていった、、、
*********************************************************************
そして何週間か後、
しばらく休養を取ってから、メンバーとスタジオで再会すると、ヌマサワさんが「結婚、決まったんだよ!」と皆に報告してきた。
「おお~!!!!」
「大スター」ヌマサワさんの結婚である、めでたくないわけがない。
相手はもちろん「セレブ彼女」ユンちゃんである。
やってきた当日、晴天の目黒の由緒ある式場で、実に厳粛な結婚披露宴の席に皆集まっていた。
そして「新郎新婦のご入場です」とのアナウンスとともに、
なんと、「場内にジミ・ヘンドリックスが爆音で流れた」のである。
来賓全員大爆笑である。
これ以上無い多幸感とともに披露宴は終わり、二次会は西荻窪のライブハウスで行われた。
もちろん我ら岩石一家はそこで「結婚ヴァージョン」の最高のショーを繰り広げ、ゲストとして「大学の先輩」でありヌマサワさんの友人でもある「フライング・キッズ」のメンバーがステージに上がってきて共演した。
そして、宴もたけなわ、
ヌマサワさんは「新郎からの挨拶」でステージに上るや、全裸になり、「俺はジミヘンだ~!!!!」と叫んで『パープルヘイズ』のイントロを弾き出した。
刹那、私はドラムセットに走り、フッシーはベースを担いだ。
場内に『パープルヘイズ』が鳴り響く中、
新婦ユンちゃんさんは「お盆」で全裸の新郎の股間を隠していた。
(つづく)