旅する建築家。「愛媛県~松山のモーニング娘。~」
あれは6年前の夏、愛媛県松山市。
沖縄への赴任に半年程かかっていたので、その間に松山でゲストハウスをつくる計画をフリーランスで請け負った夏であった。
そんな時、ニュースが飛び込んできた。
モーニング娘。が松山に来る、しかもライブハウス公演。
私は満を持してライブに臨んだ。
そして、本当にモーニング娘。が松山のライブハウスに降臨したのである。
地下の小さなライブハウス空間に発生したモーニング娘。のエネルギー値は凄まじく、例えるならば「密室でのオリンピック選手のハンマー投げ」、「ローリング・ストーンズのシークレット・ライブハウス・ギグ」。
普段は日本武道館を凄まじくグルーヴさせているエネルギーが、田舎の小さなライブハウスの中に発生したのである。
そして、神々に捧げる巫女たちの宴のごとき神々しいメンバーたちの中で、明らかに次元の違う輝きを放っていたのが、尾形春水さんであった。
いや、生で観るまでは、歌下手、踊り下手、の後列メンバー、という認識しかなかったのだが、彼女は神々の如きメンバーたちの中で、ひときわ高輝度で発光していた。
実際に歌パートも少なく、後列にいたのだが、その多幸感溢れる一挙一動に目が奪われ、その笑顔はアイドルの神から祝福されていた。
私のアイドル心は尾形さんに完全に奪われた。
そして何と、
終演後は「握手会」である。しかも私にとって人生初めての。
モーニング娘。の普段のライブには握手は無いのだが、
今回の「ナルチカ」という名称のツアーは地方都市のマーケットを開拓するためのリサーチ&プロモーションの意味合いがあるので、大サービスで握手がついてくるのだ。
ライブハウスの扉が開いて、ロビーにメンバーの姿が見えた瞬間、あまりの輝きの眩しさに遠のきそうになる意識を保ちながら握手に臨んだ。
あまりに善、あまりに清らか、五穀豊穣の神々との握手であった。
例えば、私がガン患者だったら、握手の瞬間にガン細胞は消えていただろう。
それほどまでに、彼女たちの清らかなヴァイブレーションは強烈なのである。
そして何人目か、先ほど大感動した尾形さんと握手するする直前、私は準備していたわけでもないのに「凄く良かった!!!」と感動の言葉が自然に口から出た。
それまで他のメンバーには緊張のあまり小声で「ありがとうございました」としか言えなかったにもかかわらず。
尾形さんは、満面の笑みで私に何かを言っていた、が、極度の興奮状態の私の記憶は飛んでおり、その言葉は覚えていない。
ただ、私が次のメンバーに移ってからも、まだ振り向いて私に何か言っていた(次のメンバーは若干不機嫌そうだった、いや、私が大好きな小田さくら先生には失礼をしてしまった)。
そしてその晩、私は生まれて初めて尾形さんのブログのコメント欄にコメントをした、もちろんその内容は秘密だ。
そのすぐ後に、尾形さんはモーニング娘。をご卒業なされた。
本当に「一瞬」の出会いと別れであった。
あの夏の奇跡の「一瞬」の思い出を胸に、
今日も頑張って自分の人生を歩んでいます。