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祝! 猫ちゃんは生きていた!
いきなりなに? と、思わないでほしい。秋から冬にかけてずっと気になっていたさくらねこを、半年ぶりに目撃して、今、私はとてもご機嫌だ!
我が家の北側に広がる昭和の香り漂う住宅地で、数年前から時折、目撃していた猫たち。中でもこの子はなかなかの美猫で、多少は人慣れしている。ねぐらになっているっぽい猫トイレもあるから、外で飼われている元地域猫かもしれない。別のお宅の前では、カリカリももらっていたようだ。
散歩ブログにも書いたことがある。
2022年の真夏だった。わたしは人工股関節手術後で、せっせと早朝散歩に励んでいた。そんなわたしを励ましてくれたのが、春に生まれたっぽい子猫たち。毎朝のように路地から顔を出して走り回っていた。
日が昇ると暑すぎて歩けなかったから早朝5時6時に出かけていたのも良かった。猫たちにカリカリをあげていた奥さんも毎朝7時ごろ、出ていたようだ。
若い猫たちはすばしこく、警戒心はたっぷりで写真もなかなか撮らせてくれなかったけれど、このさび猫ちゃんはどっしり構えて、涼しい風の通る石畳や冷たいコンクリートの上でまったりと寝そべっていることが多かった。
さくら耳に気づいたのは、Facebookで指摘されてからだ。
さくら猫ということは、やはり飼い猫ではなく、街猫(最近は地域猫というらしいけれど、なんとなく好きじゃないので、街猫と呼ばせて)なんだろうか。
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この写真を最後に、その後、この猫たちをみかけることはほとんどなくなった。成長して逃げ足が早くなったからかもしれないし、わたし自身、早起きできなくなっていて、通りかかる時間帯が遅くなったからかもしれない。いずれまた見かけるさと思いながら出会えなくなって1年が経つ頃、すっかり痩せ細ったサビ猫ちゃんに遭遇した。
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近づいても逃げる元気もないのか、寝そべったまま、しゃがれた声でニャーニャー鳴く。何かを訴えているようなニャーニャーで、やっと立ち上がっていつものねぐら近くまでわたしを連れて行き、ニャーニャーとまた、鳴き続けた。
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なんとかして
お腹ぺこぺこだよ
死にそうなんだ
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サビじゃなく三毛かな?
そんなふうにも聞こえてくる。
ただでさえ暑すぎる夏だった。
水はどうしていたんだろう。
ご飯、もらえなくなったのかな?
もしかして、この家のひと、もう引っ越してしまったのかな?
この辺りは古い住宅が密集していて、再開発の計画が持ち上がっている。小さな公園を含む一帯を丸ごと再開発して、今より広い公園と高層ビルになるらしい。早ければ今年じゅうに工事が始まるんじゃないだろうか。
そんな計画が持ち上がっていることに気づいたのも、散歩をしている最中だった。再開発推進のための事務所がひっそりと設けられていた。
いつ来るともしれない大地震、その時、緊急車両も入れない狭い路地と木造家屋が密集していたら、やはり危険だ。昭和そのままの路地は、上京したての気分を思い出させて懐かしく、なくなってほしくはないけれど、時の流れと時世というものは如何ともし難いということなのだろう。
せつない。けど、せつない。
ニャーニャーの声がしゃがれてしまい、ガーガーと鳴き続ける猫ちゃんに後ろ髪ひかれながら、その場を離れた。長居をしたら拾ってしまいそうだった。
拾えばいいじゃんって?
でも、その覚悟もできていない。
すばしっこかった茶トラくん、ぱっちりお目目の黒白ちゃん、ブチャいくなサビトラちゃん、グレーと白の長毛くん、みんなどこへ行ったんだろう。
誰かに引き取られたか、保護されたのか。みんな、ほぼさくら猫になっているっぽかったから、面倒を見るひとはいるんだろうな。
それから半年。通るたびに昭和の小径とその路地はひっそりとして、猫の気配などまるでない。毎年、春と秋、冬の初めに活発になる猫の恋の鳴き声も、最近はめっきり聞かれなくなった。
そんな時だったのだ。久しぶりに通った小径のはるか前方に、長く寝そべっている猫がいる。
新参者かと思ったら、あの、サビ猫ちゃんではないか!
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メスだとばかり思っていたけど
サビじゃなく三毛、しかもオス??
希少猫だったんかい?
お前、生きてたの?
よく生きてたね!
えらいえらい!!
ちょっとふっくらしてるじゃん!
えらいえらい!!
よく頑張ったね!
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思わず猫に話しかけている。
歳を取ったら、こういうことが全く恥ずかしくなくなった。
外で独り言だってへっちゃらだ。
上機嫌だった。
あの猫ちゃんが生きていた!
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しっかり補強されていた!
大事にされていたんだね!
頑張れ!
長き生きするんだよ
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