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物語は搾取されました

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【短編小説】物語は搾取されました 六、これが私のプチ贅沢です

【短編小説】物語は搾取されました 六、これが私のプチ贅沢です

 達哉にとって、ホテルの朝食バイキングほどの贅沢はない。
 朝食チケットを出して、白い皿に食べたいものをチマチマ並べていく。このホテルはパンの種類が多くて迷ってしまう。
 普段、朝は米派なくせに焼き立てのパンの誘惑に負け、作りたてのオムレツのトロトロを頬張り、最終的にカレーで締めていたりする。 
 今朝は、会場にいるほとんどの客がスーツを着ていた。これから仕事なのだろう。
 これから家に帰るだけの

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【短編小説】物語は搾取されました 五、ナナちゃん

【短編小説】物語は搾取されました 五、ナナちゃん

 まな板を上から映した映像から始まった。
 今朝はサンドイッチらしい。 
 1つはたまご。
 ゆで卵を大き目のフォークで潰して、マヨネーズと塩を混ぜる。ゆで卵を2つも使ったから、柔らかな食パンの上にたっぷりと卵の黄色が広がった。
 もう1つはハムとチーズと薄切りトマトとレタス。
 丸のままのレタスを銀色の冷蔵庫の野菜室から取り出す。
 レタスのお尻を押して、器用に芯をくり抜いた。その穴の空いたレタ

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【短編小説】物語は搾取されました 四、運営事務局問い合わせ係、阿部 後半

【短編小説】物語は搾取されました 四、運営事務局問い合わせ係、阿部 後半

「あのコメントは、あいつが嘘をついているからです」

 なんだかよくわからないが、ここは差し障りない程度正直に話すことにした。

「あいつは結婚していて、あの男は元カレだ。不倫だよ。だから告発したつもりだった」

「お知り合いなんですね」

 夫だと言いたくなくて、口ごもるしかなかった。

「その事実はご確認したのですか?」

「いや、でも、そうだろう」

「不倫相手との日常を投稿するのも利用規約

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【短編小説】物語は搾取されました 三、運営事務局問い合わせ係、阿部 前半

【短編小説】物語は搾取されました 三、運営事務局問い合わせ係、阿部 前半

 次の動画は炊飯ジャーから始まった。
 真上から撮られた炊飯器は正しく円を描き、その内側のごはんは雑穀米の薄ピンク色に染まっていた。
 熱っ、熱っ、と言いながら、妻の華奢な指がおにぎりを握る。お米の熱で手のひらが赤くなるのも構わず、小さめの三角おにぎりをせっせとこしらえていく。それを海苔で包み、白い皿に並べた。
 その指先に目を奪われていたのに、画面が突然シルバーの小鍋に代わり、わかめの味噌汁をよ

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【短編小説】物語は搾取されました 二、妻に触れたのはいつのことだろう

【短編小説】物語は搾取されました 二、妻に触れたのはいつのことだろう

 次の動画はまたキッチンから始まった。カメラは一部分しか映さないが、達哉にはその奥に何があるのかよくわかる。

 銀色の冷蔵庫は、いつも張り付けてあるはず子どもの絵や、集金袋などはすべて外され、まるで新品みたいな顔をしていた。
 そいつから冷凍室を引き出し、妻と思わしき彼女は某有名アイスを取り出した。クッキーアンドクリームの文字が画面に映し出される。

〈私の本当の小さな贅沢は、実は朝ごはんより金

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【短編小説】物語は搾取されました 一、物語は搾取された

【短編小説】物語は搾取されました 一、物語は搾取された

その付箋を見つけたのは靴を脱いだときだ。黄色い蛍光色の小さな紙は黒い靴下の裏に貼り付いていた。

 物語は搾取された
 Shimasaki J

(何だよ、これ)

 付箋を剥がしてシャツのポケットに入れた。意味不明な文字を読み、自分には関係ないとゴミ箱へ捨てようとしたはずなのに。
 何故なら、胸の中で誰かが囁いたのだ。これは重要なパスワードだ、と。

 ビジネスホテルの四角い窓ガラスの向こうは夜

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