記憶の断捨離④ ~自分を責めてしまうクセ~

記憶の断捨離術は、自分の本当の気持ちと向き合うことで、過去の嫌な記憶に決着をつけて、心を健康にする心理療法です。

前回までの記事では、自分の本音と向き合うためには、自分を全て受け入れる優しさが必要だということに触れました。

今回は、自分を受け入れるために心がけるべきことの一つを説明します。


本記事の概要:

長年責め続けてきた大嫌いな自分をいきなり好きになるのは難しいので、まずは自分を責めることをやめ、"好きではないけど嫌いでもない"ぐらいを目指す。

自分を責める行為は、脳内麻薬が出るので依存性がある。

自分を責めることは、改善策とセットであれば、成長の糧にできる。

しかし、改善という前向き思考がないなら、責めるクセは百害しかない。今すぐやめよう。



"自分を大切にする"とは、自分自身と向き合って、それを受け入れている状態です。

この状態になれればとても生きやすくなるのですが、そうは分かっていても簡単にはできないものでしょう。


現代日本において、「自分のことが好き」と胸を張って言える人はあまりいないように思われます。

もしそう思っていても、この国では謙虚さを美徳としすぎる風潮があるので、言葉に出すにはためらわれるという人もいるでしょう。


むしろ、自分に厳しく、自分を追い込んでこそ、辛い経験を乗り越えてこそ初めて成長できるといった考え方が、学校の勉学やスポーツ、職場などありとあらゆる所で見られます。

「お前の代わりはいくらでもいる。やる気がないならやめちまえ」という昭和の指導者も本質は同じです。

こうした考え方は、人材が掃いて捨てるほどいたバブル時代では通用したかもしれません。

しかし、いまや超超少子化社会。完全に時代錯誤と言えるでしょう。


そのような風潮が未だに根強いため、自分自身を過度に追い込む人が多いのです。

しかも、追い込むこと・苦労することが目的にすり替わっている場合は意外と多く、無意味な追い込み方をしてしまうので、せっかく追い込んだ結果得られるメリットが何もないといった状況は本当によく見られます。


もう、自分を無意味に責める必要も、嫌う必要もありません。

しかし、長年責め続けてきた大嫌いな自分自身を、いきなり好きになれというのは難しい話です。

よって、まずは嫌いではない/嫌いでも攻撃するほどではないぐらいのレベルを目指しましょう。ステップアップ感です。

"自分を責めてしまうクセをやめる"ことを目指します。


そもそも、自分を責めてしまうことはなぜクセになるのでしょうか?

この理由は脳科学的に明らかにされています。

自分を責めることがクセになる原因は脳内麻薬です。


脳内麻薬とは、脳が刺激に対して麻痺してしまう成分ということです。

例えば、ボクシングの試合中に骨折をしても、アドレナリンが効いて痛覚が麻痺していて骨折の痛みに気がつかず、試合後に初めて骨折に気付いた、といった話はよくあります。


何かミスをして、「またやっちゃった。俺っていつもこうだ……」などと思うことは誰にでもよくあることでしょう。

また、何かのミス以外にも、他人がすごいというだけで「それにひきかえ私ときたら……」と比べて落ち込むこと等もあるでしょう。


このとき私たちの脳内では、その辛い気持ちを和らげるために脳内麻薬が働いています。

麻薬という言葉の通り、この物質には依存性があります。

すなわち"慣れて"しまい、新しい強い刺激をどんどん求めるようになってしまいます。

これが"クセ"です。

自分で作り出した辛い気持ちに対して脳内麻薬を出して快楽を得る、自分を責める行為はドMなクセなのです。


とても厳しい言い方をすると、"浸っている"あるいは"悲劇に酔っている"とも言えるかもしれません。

もし本当に反省をするのであれば、「またやっちゃった……いつもオレってこうだ」なんて自傷に浸っている暇があったら早く対策を考えるべきです。

仕事であれば当たり前ですよね。

同じミスを二度としないために、環境や自分の仕事術などをどう改めるべきかを考えることを求められるはずです。

仕事の世界のようにドライに考えれば、自分を責める"だけ"の時間は無駄以外の何物でもありません。


もちろん、責める気持ちが未来に繋がっていれば、それは成長の元と言えるでしょう。

適量のストレスは成長の糧になることは科学的にも実証されています。

しかし、そう前向きに考えるには相当なエネルギーが必要です。


時には立ち止まることも必要です。

責める"だけで終わり"は、もうやめましょう。


今回はここまでです。

次回は、自己肯定感を高める思考テクについて見ていきます。


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