苦情対応マニュアル(保存版)
10年以上苦情対応をして来た中で、培ったノウハウをここに残しておこうと思います。苦情対応は非常に辛い仕事です。苦情に戦う仲間の一助になれば幸いです。
思い起こせば数々の苦情を受けて参りました。
裁判沙汰や慰謝料問題に発展したこともありました。
自分が犯したミスではないのに、苦情担当は謝らないといけない。
本当に辛い立場です。
今まで散々な目にあって来ました。
「〇〇さん(自分)がいる間はここはダメだと思います。」
「持っている資格を全部言ってみろ!」など。
あるお客さんには合計6時間、電話で詰められたこともありました。
苦情には2つパターン
解決型
解決型の苦情の場合は”質問”を相手がしてきます。
質問が来る苦情は、一般的な思考の持ち主です。
基本的にはこの質問に答えて行くことが流れになります。起こった問題は残念ではありますが、解決に向かっていくことでしょう。
厄介なのは下記の不満型です。
不満型
サイコクレーマーはこの不満型です。感情のままに不満を爆発させます。こちらが説明しようものなら「言い訳するな!」など罵声が飛んできます。
要するに”解決”する段階ではないのです。不満型の対処方法は、まず受け止めることが必要になります。
相手が疲れるまで、傾聴しましょう。遮ってはいけません。
まずは”共感”です。相手の高ぶった感情を受け取り、「こいつとは話せるな」と信頼関係を築くことが大切です。
①不満(感情)の高ぶりを取り除く。
それから・・・
②解決(ロジック)の部分で話を進めます。
イカれたサイコクレーマーの話を慌てて遮ってはいけません。慌てず、ある程度聞き流しながら傾聴しましょう。耐久戦覚悟です。
不当な要求を迫られた場合
非常に気を付けないといけないシチュエーションがあります。それは不当な要求を迫られた場合です。サイコクレーマーは、高頻度で不当な要求を仕掛けて来ます。
この部分は聞き流すことは出来ません。
またこういった場合に慌てて、答えてはいけません。
自分も過去に「この部分は全部おたくの責任ということでいいですよね!?」とか「実際に問題を起こした職員を連れて来い!」など言われたことがあります。
切迫した状況では、その場で答えなければならないといったプレッシャーがあります。
こういった場合に使える最高の自分の必殺技を伝授しましょう。
それは「〇〇に関しては、一旦会社に持ち帰らせて下さい。」と言うのです。
自分だけで責任を負えないケースがほとんどだと思います。一旦持ち帰って会社の力を利用しながら対応していきましょう。
自分も何度もこの技で修羅場を切り抜けてきました。とくにかく会社に持って帰ると時間を稼ぎ、反撃の準備を始めるのです。
苦情対応 基本の流れ
この3点セットで勝負しましょう。
①何が起こったのか。状況説明
まずは、何が起こったのか状況を説明しましょう。
問題が起こった場合、事実関係や経緯の把握が一番大切です。
相手は一番に何が起こったのかを詳しく知りたいのです。
そして、ヒアリングやアセスメントを十分にしたら自然と解決策が出てきます。解決策が思いつかないのなら、事実確認が足りていないと考えましょう。
ここの事実確認が甘ければ、解決までの道のりが歪んでしまいます。
スピードがポイントです。事実確認のスピードが遅くなれば遅くなるほど、情報は曖昧になってしまいます。
②何が悪かったのか。謝罪。
心情理解が大切です。何が起こったのか説明した後は、その件について申し訳ない気持ちを持っていることを伝えましょう。
相手は起こった問題に対して、こちらがどう思っているのかが気になります。謝罪することで、相手の心情を理解を示すことが出来ます。
苦情の裏には、怒り、悲しみ、悔しさ、辛さ、やるせなさなどマイナスの感情が渦巻いています。
伝え方ですが、気持ちを込めることがとても大切です。
自分は以前は気持ちを入れて謝罪することは苦手でした。でも気持ちを入れるだけで解決へ向かうスピードがだんぜん速くなります。感情のパワーは凄いです。
「〇〇に関しまして、大変お辛い思いをさせてしまったことを謝罪いたします。」など。漠然と謝るのではなく、何が悪かったのかを限定することが大切です。
漠然と謝ると本当に理解していない様に捉えられてしまいます。
③今後どうするのか。再発防止策
今後どうするのか、再発防止策をお伝えしましょう。
具体的かつ、現実的、実現できるものでないとなりません。十分に事実確認が出来ていれば、自然と再発防止策が思いつくはずです。
会社の力を利用して、問題を一旦持ち帰り再発防止策を練りましょう。
相手の納得できる再発防止策であれば、相手は振り上げたこぶしを下してくれるはずです。
この上記3点セットを、苦情対応の際には思い出して下さい。
正直一番 ひき逃げ理論
正直が一番です。繕ったり、誤魔化したり、隠したりしてはいけません。隠す気持ちは分かりますが、正直であることが結果的に被害を最小限に収める方法なのです。
ひき逃げ理論
問題に対して、隠す方法を取ったとします。結果的に隠したことがバレた場合に、起こした問題(一つ目)隠した行為(二つ目)の罪を犯してしまうことになるのです。
元々一つだった問題が、隠す行為で二つになります。ひき逃げも、事故があったことは残念ではありますが、逃げたという二つ目の罪を犯してしまうことになるのです。
隠す行為のデメリットはまだまだ続きます。隠すような人間として、社会人の一番大切な”信用”を失ってしまうのです。今後のキャリアにおいて汚点を一生引きずってしまいます。
起きてしまったことは大変残念ではありますが、「正直一番。」自分も何かトラブルがあった時にはつぶやく様にしています。
被害と取り戻そうと、成功率の低い対応をしては被害が増すだけです。小細工せず、割り切って、腹をくくりましょう。
正直な話
実は偉そうに書いて来ましたが自分も過去には、繕ったり、誤魔化したり、隠したりしたことがあります。最悪だったのは隠したことが、バレて大変なことになったことがあります。(隠すことが一番罪が重いです)
特に、隠した時程バレるのです。不思議なものですね。(哀愁)
過去の自分がこの記事を読んでいたなら・・・と悔やみます。高い授業料でした。
実は正直が一番被害が小さく、対応も簡単なのです。
苦情担当は一番カッコいい仕事
苦情担当は残念な仕事でしょうか?
いいや違います。自分は無茶苦茶カッコいい仕事だと思います。
自分がしてしまった問題ではないのに、役割として頭を下げる。最初はなぜこんな辛いことを自分がしなければならないのかと、怒りと悲しみがこみ上げて来ました。
ヒーロー
部下が起こした問題を代わりに謝る。
これはヒーローのすることと同じなのです。つまり、苦情対応は会社を代表してピンチを救うヒーローなのです。
謝ることは、強い人間にしか出来ない
謝る人間は、弱い人間でしょうか?ダメな人間でしょうか?
僕は強い人間だと思います。
謝罪が楽しい人間はいません。謝罪とは最も辛いものの1つです。でもその辛さを飲み込んで対応する姿は”強い人間”そのものです。
その強い人間は、相手にも伝わります。頑張りや覚悟や意気込みが相手にも伝わるのです。この職員は身一つで自分が犯していない問題に対して会社を代表して真摯に対応していると伝わるのです。人間性の見せ場なのです。
役者 謝罪は会社を代表しておこなう役割のひとつ
謝罪に対して、自分の人生のすべてを抱え込む必要もないと考えることも大切です。謝罪という役割を会社の代表として実施するという客観視した視点が必要です。
過度に自分が抱え込んでしまうと、謝る一歩が出ません。人間性を否定される気持ちになるとは思いますが、そういうロールをこなしているのだと考えましょう。
最強の方法
苦情対応の研修を受けていた時に、若い弁護士の先生に質問した時の答えが衝撃的だったので最後に書きたいと思います。
私「クレームリスクについて、どこまででもクレームを言おうと思えば言えると思いますが、そういった場合どう対応したら良いですか?」
若い弁護士の先生「そういう人に関わらない様にして下さい」
そもそもそんなことが簡単に出来れば、こっちだって苦労してないよー!とは思いましたが、ある意味原理原則の様な気がして気に入っています。