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1285_落下の解剖学
「ねえ、たまには映画でも見ない?この映画、面白いらしいよ」
「何?『落下の解剖学』?サスペンスか何か?」
「そう、アマプラで無料で見れるの」
「へえ、そんな面白いんだ」
「フランスの映画らしいけど」
「じゃあ、試しに見てみようか」
「ふーん」
「なんか、テンポいいわね」
「でも、これは、もうなんというか…」
「絶対、奥さんが殺ってるでしょ」
「いや、でもわかんないよね、そう疑って見るとそうとしか思えないけど」
「主人公は母国語は英語だから、劇中はたどたどしくフランス語を喋ってる感じなのね」
「カタコトっぽく聞こえるわけか、そこは、吹き替えじゃなくて、完全に字幕で見たかったわね」
「でも、奥さんドイツ人で旦那がフランス人で。どっちの国に住むのか、子どもにどっちの国の言葉を喋らせるのか、って国際結婚してる人とっちゃ難しい問題なのね」
「日本人同士だと生じないからなあ」
「てか、この子の演技力が凄すぎじゃない?」
「てか、みんな演技上手いわよねえ。邦画とは大違いだわ。でも、一番はこの犬いいわあ」
「アスピリン2回も飲まされてるのにね。やっぱりうちも犬飼おうよ」
「そうねえ」
「てか、フランスの裁判ってこんなんなんだ。夫婦の痴話喧嘩を裁判の証拠に出させるのか死にたくなるよね。でも、もし、こんな面白い裁判やってたら、みんな傍聴見に来ちゃうわよ」
「人気作家が自殺と見せかけて、夫を殺したかも、ってそんな事件あったら、ワイドショーもほっとかないわよ」
「しっかし、この検事、ムカつくなあ」
「それが仕事だからね、被告人の嘘を暴いていくのが」
「てか、夫婦共に小説書いてるっていうたてつけも見事だよね。小説のネタにするために夫婦喧嘩を録音してたっていうのは秀逸だわ」
「なんだろう、確かに妻が殺したんじゃないか、っていう視点だと、妻がひどいって聞こえるけど、旦那も思いつきでフランスに移住して小説書けずに泣かず飛ばずっていうダメ亭主かもしれなくて、妻の言うことも正論かもしれない」
「でも、妻も旦那のアイデアをそのまま使って小説書いてヒットさせたり、バイセクシャルで女と不倫したり。どっちもどっち的な部分があるわよね」
「うーーん、結局、真実はどっちなんだ」
「え、マジ?これで終わり?」
「結局、どっちなん?でも、まあこういうラストもありなのかあ」
「もうこの2人、わかってたんじゃないの」
「しょうがないよ。この子の立場からしてみたらさ。状況証拠を比べて吟味して考えて、最後は自分で決めたんだから」
「お母さん捕まっちゃったら、1人で生きていかないといけないもんね」
「いやあ、ああ、なんつーか、余韻は残るよね。余韻が残るのはいい映画ってことか」
「まあでも私は面白かったなあ。2時間半あっという間に終わっちゃったわ」
「真実は、人の数ほどあるってことなんだよねえ。どれを信じるかって人それぞれだってことか」
「藪の中なのね」
「たまにはこういうの見るのいいけど、ちょっと疲れちゃった」
「そー。毎週こういうの見るのはちょっとね。我々、BSの旅番組とか見てるのがちょうどいいね」