歴史と科学 Vol.20 〜墨汁〜
墨汁(ぼくじゅう)は、主に漢字や書道に用いられる黒い液体のインクで、古くから日本、中国、韓国などの東アジア地域で広く使われてきました。今回は、墨汁の歴史や作り方などについて詳しく解説します。また、墨汁の特徴を科学的見地から解説します。
墨汁の歴史
墨汁や墨の歴史は古く、紀元前3000年ごろにまでさかのぼります。初期の墨は、植物の煤(すす)や骨を焼いて得た炭素を主成分とし、水や膠(にかわ:動物性の接着剤)で練り上げて固めたものでした。この技法は中国で生まれ、後に東アジア全域に広がります。
中国における墨の発展: 中国では、漢代(紀元前202年~220年)にはすでに固形の墨が使われており、唐代(618年~907年)にかけて墨作りの技術が大きく発展しました。この時期には、煤と膠の混合比率を調整したり、様々な香料を混ぜたりすることで、より高品質な墨が作られるようになりました。
日本への伝来: 墨の技術は中国から日本にもたらされ、日本では奈良時代(710年~794年)に書道が盛んになるとともに、墨も広く使用されるようになりました。平安時代には、仏教経典や文学作品の書写に墨が使われ、墨汁や墨の製造技術も次第に日本独自のものに発展していきました。
近現代の墨汁: 近代に入ると、従来の固形墨を磨る工程を省略し、既に液状になった墨汁が一般に普及しました。墨を擦る時間が省略されるため、特に学習用途などでの利便性が評価され、書道の教育などでも広く使われるようになりました。
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