“5GOOD”で未来につなぐ心地よいものを生活に取り入れる提案「GOOD NATURE STATION」
買い物客や観光客でにぎわう四条河原町からほど近い場所にある「GOOD NATURE STATION」。自然にやさしく、体にいいものを揃えたマーケットやレストラン、ホテルからなる複合型商業施設です。ヨガや瞑想、お茶会などのイベントやオーガニックな商品が集まるマルシェも行われており、訪れるだけで楽しく、地球にやさしくなれそうだと感じる場所です。今回は、株式会社ビオスタイル マーケット事業部シニアマネージャーの本山喜之(もとやまのぶゆき)さんに、環境に対する取り組みについてお話を伺いました。
GOOD NATURE STATIONは、こうして生まれた。
ーーまずは、GOOD NATURE STATIONが誕生した経緯から、教えてください。
「株式会社ビオスタイル」は、京阪電気鉄道を中心とした京阪ホールディングスの会社です。GOOD NATURE STATIONは、5年ほど前、京阪沿線上の活性化を図るため、複合施設を作る計画が立ち上がったことから始まりました。
それまでも省エネ車両の導入や系列ホテルの緑化など、様々な事業を行ってきましたが、単なる複合施設ではなくて、さらなる付加価値を持たせたいという考えがありました。
そこで発足したのが、環境にいいものやオーガニック食品を扱い、お客様に有益な情報を発信をしていく「ビオスタイルプロジェクト」です。当時は「SDGs」という指標もなかったので、自分たちで独自の基準を決めて、取り扱う商品やイベントなどの企画を練っていきました。ですが、途中でしんどくなってしまったんです。
ーーなぜ、「しんどい」と思うようになってしまったのでしょうか。
「オーガニック」という枠組みに縛られて、ストイックになりすぎてしまい、辛くて長続きしなかったんですね。そこで、商品がオーガニックかどうかで判断するのではなく、「健康・心・地域・社会・地球にとって、健康的でしあわせであること(=5GOOD)」を基準に判断することにしました。これが施設のコンセプトである「GOOD NATURE」にもなっています。
ーー具体的には、どんなことが「GOOD NATURE」なのでしょうか。
例えば、1階のマーケットで使用しているテイクアウト用の包装資材。ドリンクやナッツを入れるカップはフタ不要のバタフライカップ、サトウキビやコーヒーの搾りかすで作ったバカスストロー、葦で作った箸などを採用しています。本当はプラスチックを使いたくなかったのですが、コストがかさんだり、長持ちしなかったりしてビジネスとして成り立たなくなります。ですから、できる範囲で自然由来のものを使い、「GOOD NATURE」であるような取り組みを行っています。
心地よいものは入り口、ストーリーがあるから満足できる
ーーGOOD NATURE STATIONで働くようになってから、本山さん自身の心境の変化はありますか。
この会社に入って5年目になりますが、大きな心境の変化は特にないです。この施設で働いているからいつもオーガニックの商品や食べ物を取り入れているわけではないんですよね。実はカップラーメンとかジャンクフードも大好きですし(笑)。働く私たちも、お客様も、心地よいものを無理なく取り入れられることが一番だという考え方なんです。
ーージャンクフードも食べられるとは意外です(笑)。お客様が「無理なく」取り入れていけるように、どんな工夫をされていますか。
まずは「おいしい」「香りがいい」「見た目がいい」「食感がいい」など、お客様の五感に訴えるものを商品として取り揃えています。
「なぜこんなにおいしいのか?」と表示をよく見たら、有機栽培だった。そこが入り口になるんじゃないでしょうか。さらに生産者の思いや、商品ができるまでのストーリーを知っていただき、「おいしさ」にも理由があることを理解していただければ、無理なく生活に取り入れていただけるんじゃないかなと思います。
人との関係性を大切にして循環を作る
ーーそうなると、生産者との関係性も、ものすごく大事になってきますね。
ビジネスを行ううえでは、利益をあげることも必要なんですが、私は生産者さんをはじめ関わってる方との関係性を大切にしていきたいんです。だから、生産者さんに「どういうことをしたいか」をまず聞いています。
生産者さんが「商品をアピールしたい」なら、期間限定のショップやイベントへの参加を提案しますし、「新商品を作りたい」なら一緒にやろうということにもなります。そうやって長くお付き合いしていくなかで、生産者さん自身も「5GOOD」を基準にして取り組んでいただけたら、とても嬉しいですね。
ーー生産者との関係性を育む中で、生まれた商品はありますか。
1階にあるスイーツのお店「RAU(ラウ)」のケーキがそのひとつです。このケーキのトッピングには、お茶の生産者さんが育てた有機栽培の茶葉を使用しています。
通常、お茶の最盛期は5月から8月なので、旬を外れた冬場の茶葉は使い道がありません。手が空く冬場にも茶葉を売るルートができるということで、生産者さんも快く協力いただいています。
こういった事例を聞いて、「有機栽培に挑戦してみよう」という人が増えるといいなとも考えています。
時間はかかるかもしれませんが、「GOOD NATURE」というコンセプトのもとで関係性を築き、成功体験を積み上げていければ、結果的に脱炭素の社会に近づいていくはずです。
京都で生まれた活動が日本中に広がる未来
ーー茶葉の他に、うまくいった取り組みはありますか?。
生ごみの廃棄を減らすために、施設内のレストランやイートインコーナーで出る生ごみを堆肥に変える機械を導入しました。その堆肥は滋賀県近江八幡市の生産者さんに買い取ってもらい、お米を栽培する田んぼで使っていただいてます。さらには、できたお米はマーケットで販売するなど、お客様、施設、生産者の間で循環を生み出せるような仕組みをつくりました。
ーー最後に、2050年の「脱炭素社会」を実現するために、どんな未来をつくっていきたいか教えてください。
GOOD NATURE STATIONは現在、京都にしかないのですが、全国に広まれば、もっといい世の中になると思うんです。決して全国展開したいということではなく、お客様のライフスタイルに「GOOD NATURE」な考え方や取り組みがどう入り込んでいけるかというのが目的です。「おしいしいもの、自分が良いと思うものを選んで買っていたら、知らぬまに脱炭素に貢献していた」というように、少しずつ継続することでみんなの当たり前が変化し、結果的に地球にやさしい未来になったらいいなと思います。
関連リンク
・GOOD NATURE STATION