ゲーム分析#03_Flower(Steam版)
1. はじめに
今回は、講師の先生におすすめしていただいた、Flowerをプレイしてみたので、分析をしてみようと思います。
今回のゴールは、2つあり、
システム的な面白さ→→→いつ・どのように感情が揺れ動くのかの把握
複数の分析法の比較検討
を目指していきます。
2. 主体性構造モデル
最初に、いつもの主体性構造モデル。
プレイヤーに可能な操作は「花びらを動かす」だけなので、
シンプルにまとまりました。
今回は、『ゲームメカニクス おもしろくするためのゲームデザイン』
を参考に、どのようなフィードバックループが起きているのかも加えてみました。
「建設的なポジティブフィードバック」はゲームを不安定にし、プレイヤーを勝たせる効果があります。
Flowerでは、つぼみに触れて花びらが増えるほど、当たり判定が増えていき、次のつぼみに触れやすくなっています。そのため、プレイヤーはスピードに乗って大量のつぼみを一斉に花開かせることができるようになり、
序盤: 慎重に操作 ゆっくり移動 つぼみ1つ1つを狙う
終盤: 大胆に操作 スピード感 大量のつぼみをまとめて
メリハリのある遊びになっていると感じました。
また、いわゆるレベルアップのような課題の達成に対する報酬が、花びらが増えていって、その「操作感の楽しさ」の拡充だけに留まらない、「視覚的な楽しさ・気持ち良さ」が言語化が難しいなと感じました。
3. 快感ストレス分析
次は、快感ストレス分析をしてみます。
短時間のゲームプレイ分析用の快感とストレスといった人間の本能的な部分に着目した分析です。
① 一番快感な瞬間…大量の花びらで大量のつぼみを一気に開花させる瞬間
② オノマトペ…サーっ (ベルの音)
③ 物理的操作
具体的な操作…WASD操作
ストレス…カーレースのような操作性なので、操作自体が楽しい反面、
ステージギリギリの操作が思い通りにいかないこともある
④ 手段
直接操作してできること…花びらを動かす
結果的に起こること…花びらが動く
快感はある?…ある(制限のある分、カーレースのように制御が楽しい)
ゲーム内で評価されないことをしても楽しいか…部分的にそう
ストレス…弱い
⑤ 小目標
ゲーム内で「よい」とされる最小限の行為…つぼみに触れる
生理的な快感があるか…花びらが増える快感がある
ストレス…少し(花びらが少ないときに、うまく触れられなかった時)
⑥ 中目標
ゲーム内で最初に達成するゴール…一定範囲のつぼみ全てに触れて開花させる
達成したころに関するその他の快感…草原が明るく色づいて気持ちが良い
ストレス…自然な誘導がされる反面、見逃してしまうと、見つけるのに時間がかかるかも
⑦ 大目標
ゲームの最終目的…すべての(大部分の)つぼみを開花させる
共感/本能的にやりたいかどうか…景色が明るくなり、花びらであふれる光景が本能的に楽しい
4. MDAフレームワーク
続いて、MDAフレームワークを使ってみようと思います。
特徴としては、システム→個別の事象→プレイヤーの感情の流れを作って、プレイヤーの感情を考慮して仕様が考えられる点だと思っています。
M(Mechanics)…メカニクス・根本的な仕組み
D(Dymamics)…ダイナミクス・メカニクスから生み出される展開
A(Aesthentics)…エスセンティクス・プレイヤーに生まれる感情
M…花びらがつぼみに触れると、つぼみは花開いて花びらが増える・ステー
じが明るくなる
D…花びらが増えると当たり判定が大きくなり、大量のつぼみをスピード感を
もって開花させられる
A…華やかさを感じる。勢いのある花びらの動きと色の奔流が気持ちがいい。
5. シンプルに深堀り
ここまでの分析で、
全体像の把握
具体的なゲームプレイと感情の結びつき
ができたので、次は自分の気になった要素をシンプルに深堀りしてみようと思います。
なぜ花びらが増えていくことを気持ちよく感じるのか?
→ものをコレクション(集めること)自体が楽しいと感じる行為だから
→なぜものを集めるのは楽しい?
→ものが増えていく毎に達成感を感じるため
→なぜ達成感を感じるのか?
→ものが増えていく毎に、進展・成長を感じれるため
→なぜ成長を感じるのか?
→自分の影響する範囲が増加したため
転用:プレイヤーが自身のエリアを広げていくことは楽しい
花びらが増えていくことは無条件に気持ち良いことなのか?
→集まって、規則正しく動くことが気持ちが良い
→なぜ規則正しいものが気持ち良いのか?
→本能的に乱れているものを整理したいと感じる
→なぜ整理したいのか?
→整理したことで、自分が全容を把握することができるため、安心感を感じるため
転用:プレイヤーは整理されているものを自身の管理下にあると理解する
花びらが風に乗って動くことの何が気持ち良いのか?
→人間ではできない動きだから
→なぜ人間でできない動きは気持ちが良いのか?
→生身で体験できないことは新鮮だから
→新鮮なことはなぜ気持ちがよいのか?
→エンタメコンテンツに刺激を求めているため
→人間でできない動きの中で、なぜ花びらが風に乗った動きが気持ちよく感じるのか
→スピードのある動きで、数個の法則に従って創発する複雑かつ統制された動きだから(ミサイル・イワシの大群など)
→なぜそうした動きが気持ち良いのか?
→カイヨワのイリンクスのように眩暈(理解を越えた動き)だから
→なぜ理解を越えた動きなのか?
→スピード感がある。空中を動く(人間は3次元の把握が苦手)。複数の物体が別々の動きをする(動きの全貌が把握しづらい)
→つまりどういうこと?
→人間の生活において見慣れない事象を処理することは難しい
転用:直観的な要素はコントロールしやすく、直観から外れた動きは見ていて気持ちの良いものもある
6. まとめ
今回『Flower』の分析をしてみて、
どの分析のフォーマットを使っても、共通にゲームの全体像を把握することはできました。
それぞれの分析法を使ってみて感じたことは、以下の通りです。
主体性構造モデル
長所:
全体の構造を一目で見れる点と、
ジャンル分けされた楽しさで複数タイトルの比較に向きそうに感じます。
課題点:
課題点は、ゲーム内での課題を解決できる前提の流れなので、プレイヤーがうまく行動できないことを想定していないことです。
快感ストレス分析
長所:
一つ一つの行動に対してストレスを感じるのかどうか。また、目標達成以外の楽しみを探せる点が優れていると思います。
課題点:
短時間用の分析フォーマットなので、複雑性の高いゲームの分析には向かなそう?に感じます。
MDAフレームワーク
長所:
3ステップで抽象的なシステムから、具体的な個別の事象、更に感情面まで掘り下げることができるので、大まかに捉えることも、課題ごとに小さな捉え方もできるのが長所だと感じました。
課題点:
複数の要素の結びつきの把握が難しいため、全体像を分かりやすく把握することには向いていない(言語化スキルを要求する)ことだと思います。
対して、個別の事象の深堀りには、とにかく「なぜ?」で掘っていくこおが向いているように感じました!
また、個別のアクションに対して注視して感情の変化を書き出す
・MDA
・快感ストレス分析
当たりが、システムと感情の結び付きを表現できることがわかりました。
今回は以上です!ありがとうございました。