オープンワールドって何だろう?後編
4. オープンワールドの歴史 GTAⅢとシェンムー
ここから後編です。
前編リンクは↓
オープンワールドの歴史を調べていくと、
そのルーツをどこに見出すのかは人によって異なります。
初代ドラクエの「広大なフィールド(オーバーワールド)」
ゼルダの伝説の「フリーローム」
なども勿論重要な要素ではありますが、
ここでは、「オープンワールド」という言葉を使って初めて
売り出されたタイトルである「GTAⅢ」を同作に影響を与えた
「シェンムー」と比較して共通点・相違点を探していこうと思います。
GTAⅢは2001年10月22日に発売された作品で、
シリーズで初めて3D化した作品。
この作品の大きな特徴は、ゲーム世界を
「プレイヤーにのみ向けた見せかけの世界」
ではなく、
「そこで暮らしているように感じられる世界」
として作られている点です。
つまり、
「本質的にそこにいることが楽しい!」
「ただそこにいることが楽しい!」
というような、
コアプレイの境界があいまいなゲームとして制作されました。
そのための仕様として、
チュートリアル後は自由探索が可能
ミッション間の自由さ
シームレスで広大な島
天候の概念と変化
インタラクティブな住人(野次馬・逃げ惑う・叫ぶ・応戦・救急車など)
住人に暴力がふれる(特に報酬があるわけではない)
乗り込んだ車のラジオから様々なジャンルの音楽が流れてくる
などの仕様が盛り込まれました。
次に、GTAⅢに影響を与えたとされるゲーム、
1999年にドリームキャストから発売された「シェンムー」を見ていきます。
本作は、
「オープンワールド」という言葉が存在しなかった時代に
「FREE」という自由度の高さにこだわったシステムで特徴のゲームで、
横須賀の街を自由に歩き回り、思い思いのゲーム体験ができるゲームです。
シェンムーの特徴的な仕様として、
クイックタイムイベント
街中のガチャガチャを回すことができる
街中の自販機から飲み物を買える
NPCがフルボイスで進行度や時間帯によってセリフが変化する
ゲームの1日が現実の1時間という1日の長い時間設定
1986年当時の神奈川県の気象情報が搭載されて、天候が変化する
などの仕様が盛り込まれました。
その中で代表的なシステムにクイックタイムイベントがあります。
クイックタイムイベントは、街中を歩いていたら突然イベントが始まる
システムで、基本的にプレイヤーの入力のフィードバックとしてイベントが
展開されるゲームの中では、プレイヤーをゲーム世界の中に引き込むシステムでした。
ここまでで挙げた両者の特徴は、
それぞれ広大な島と横須賀を舞台に
プレイヤーが世界に入り込んで自由に振る舞うことができます。
共通点としては
シームレスなマップの移動
街にあるオブジェクトが背景ではなくインタラクトできる
NPCとの関わりにリアリティがある
天候のリアルなシミュレート
1日の時間が長い(1時間・45分)
など、プレイヤーが世界をより現実世界に近く認識することができるようになっています。
しかし、シェンムーのディレクターの鈴木裕氏がいうように
いくら自由度の高いゲームでもすべてが自由なわけではありません。
その中で、どこを自由にすることにこだわったのか。
シェンムーとGTA3のこだわりの違いを見ていきます。
シェンムーの特徴は、
クイックタイムイベントにより、プレイヤーの入力ではなく、ゲーム側からイベントが発生する世界に巻き込まれていく点
各NPCのセリフが条件によって変化するより深い対人関係
横須賀という都市の中で繰り広げられる物語
反対にGTA3では、
広大な島を舞台とする
その辺のNPCに意味もなく攻撃できる能動的なインタラクト
乗り物による高速な移動(と事故の発生)
といった違いがあります。
広さより密度をとったシェンムーと、
さまざまな乗り物での移動を駆使して広大な空間を移動するGTA3
リアルな世界の一日をシミュレートしたシェンムーと
リアルではできない犯罪行為を可能にしたGTA3
クイックタイムイベントのような受動差を重視したシェンムーと
道行く人に殴り掛かれる能動的なGTA3
ざっくりこのような違いがあります。
5. 総括
根強いファンも多い中、興行的には失敗といわれるシェンムーと、
オープンワールドの始祖となったGTA3
この両者を比較して私が思うのが、
人々がオープンワールド系のゲームに求めているもの、
オープンワールドが勃興した理由は、
「ゲームならでは」の自由度の高さ
「ゲームなのに」自由度が高い
の両立だと考えています。
どういうことかというと、
GTA3の暴力行為のように、「現実世界ではできない」ことができることがゲームの良さです。
しかし、その一方、「現実世界ではできるのに」、すべての扉には入れなかったり、登れそうな段差が登れなかったり、ロードによって没入感が削がれたり…
この二つをうまく両立しているのがGTA3だったのだと思います。
つまり、最初の論点に立ち返ると、
オープンワールドは世界に入り込んで、ゲームのゲームっぽい部分によって没入感を削がれることなく、ゲームプレイに集中することが目的と言えそうです!
その点で、GTA3の目指したオープンワールドの形は、マップの広大さとシームレス性にのみ限定されるわけではないのだと考えます。
(仮に限定した場合、この二つの条件を満たしていても、プレイヤーが没入できない世界では本来の役割をまっとうしていないと考えるためです&ゲームデザインとマップ自体も完全に切り離すことはできないと考えています)
以上から、あくまで私の結論としては、
オープンワールドはその目的から
ゲームデザイン的要素を含み、プレイヤーがゲーム世界で
「ゲームならでは」
「ゲームなのに」の自由度を享受できるレベルデザインだと考えます。
ここまで調べてみての感想として
今作のポケモンから受けた違和感の正体はおそらく、
入れないドア
プレイヤーのための施設がほとんどで、民家で暮らしの一端に触れるみたいな要素が少なかったこと
特に序盤の移動制限がストレスに感じたこと
東西にわかれたマップではあるものの、ジムリーダーのレベル的にある程度攻略の順序が「システム的に」決められているように感じたこと
あたりが原因だったのかなと思います。
6. オープンワールドとセミオープンワールド
自分なりの結論は出しましたが、「オープンワールド」に統一的な定義がない以上、様々なニュアンスで使われることになると思います。(マーケティング的な意味合いを含めて)
そのため、私が提言するのは、
オープンワールド
セミオープンワールド
の使い分けです。
これは、ローグライク・ローグライトの使い分けのように、オープンワールドの文脈をすべて満たした作品をオープンワールド、部分的に要素を抽出した作品をセミオープンワールドと区別する案が浮かびました。
勿論、これはローグライクに対するユーザーや開発の解像度の高さと、Steamを運営するValve自らが定義を設定しているからこそ可能だと思います。オープンワールドはその起源を含め、何を必須要素にするのかが曖昧です。
そのため、オープンワールド的要素をある程度含んでいたら、名乗る。みたいな加算評価になっています。そこから、ローグライクのような減算評価にするとユーザーの求めるオープンワールド的要素と、メーカーの提供するゲーム体験の一致が進むのかなと感じました。
7. おわりに
今回の記事は気合をいれたら時間も分量もだいぶだいぶ多くなりました。
論として
「我ながらどうなん?」
って突っ込み入る箇所も正直あるのですが、
乱文になりながらも、なんとか書ききれた~って思っています。
今後も気になることを色々調べて発信していこうと思います!
読んでくださった方がいましたら、ありがとうございました!
それでは!
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