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脳性まひの自分が「2足のわらじ」をはいて気づいたこと(GATHERING動画紹介シリーズ:平野さん後編)

こんにちは!私たちGATHERINGは生きづらさや障害を抱える若者のキャリアを応援する活動をしています。その一環として、先輩社会人の方々から就活・社会人生活の経験談を伺い、Youtubeで公開しています!
GATHERINGのnoteでは、動画の内容も時折紹介していきたいと思います。

今回インタビューに伺ったのは、NPO法人国際障がい者活躍社会創造協会を立ち上げた平野裕人さん(32)。社会人として働きながらNPO副代表を務め、いわば「二足のわらじ」で活動をしています。加えてパラスポーツ・ボッチャの世界に大きく携わっているとか。

記事前編では平野さんの幼少期から学生生活、さらには就職活動など、平野さん自身の経験から車椅子とキャリアをめぐる問題の一部をまとめました。中編ではキャリアアップにフォーカスを当て、障害のある学生や社会人が直面する問題について考えました。後編ではそんな平野さんの現在を掘り下げます。自分らしく働くために平野さんがはじめた試みや、大切にしていることを伺いました。

「二足のわらじ」を、履いてみる。:NPOを立ち上げるまで

昇進が上手くいかないことに悩みを感じていた平野さん。会社の中では自分のやりたいことが100パーセント達成できるわけではなく、むしろあまり気乗りしない仕事と向き合い続ける毎日に、無気力になっていたこともありました。しかしそんな平野さんに転機が訪れます。きっかけは働いていた職場で制度が変わり、ある程度の副業やNPO団体の立ち上げが認められるようになったことでした。

「会社の中でキャリアアップができないなら、自分でその機会を作ってしまえばいいのでは?」

そうして平野さんは仲間を集め、28歳でNPO団体を立ち上げました。以来、本業である「会社員」と、副業としての「NPO団体の副代表」、いわゆる「二足のわらじ」を履いて働いています。

現在、多くの就活生や社会人に取って、「働く」ことそのものがゴールになっています。特にハンディキャップを抱えた人は就職活動やその後も困難さを感じることが多く、なかなか自分のキャリアアップについて考える機会がないという場合も。自分が人生でどんなことをどうしていきたいのか。「就職」や「仕事」はそういった将来のビジョンをかたちにするための手段です。自分の将来のビジョンをしっかり見据えているなら、そこから逆算して理想の職場・仕事を考え、選び取ることもできます。

ヴィジョンとステップの図

ここに書いたことはあくまで理想論かもしれません。けれども、働くひとりひとりが明確なビジョンを持つことで、変わることもたくさんあります。「兼業」という選択をして、理想の仕事を追い求める平野さんの場合、そこにはどのような気づきがあったのでしょうか。

「二足のわらじ」、だからこそ。:「兼業」を選ぶことで見えたのは

本業と副業であるNPOの活動を両立させる中で、さまざまなことを学んだという平野さん。そのひとつが「色々な角度からの視線を持つ大切さ」でした。ふたつの職場の中でさまざまな人との関わりが作られ、本業と副業、それぞれで培ったことが相互に生かせる環境が生まれたそう。NPOをはじめてからは本業にもますます意欲をもって取り組むことができるようになり、その一例としてご自身の経験をお話ししてくれました。

本業では経理を任されているという平野さん。せっかく大学で学んできたことが生かせず、昇進や部署異動の声がかかることもなかったため、いっときは経理の仕事にあまり興味を持つことができませんでした。しかしNPOを立ち上げた最初の年度切り替えの作業で、本業で得ていた経験を生かしてスムーズに作業することができたそうです。ここで会計の大切さに気づいたことで、これまであまりポジティヴに捉えることができなかった本業に対するモチベーションも変化しました。これまでは無駄になると思っていた些細なことにも意味を見出せるようになった、と平野さんは言います。

「今はやりたくない仕事でも、いつか役に立つかも!」

「二足のわらじ」が平野さんの意識を変えた出来事はほかにも。
働く場所がふたつあることで「心のバランス」をうまく取れるようになったという平野さん。一方で上手くいかないことがあっても、環境が変わることでもう一方の職場ではそうした「もやもや」を引きずることなくパフォーマンスを発揮できるそうです。兼業によって仕事とそれに関連する精神状態の「切り替え」ができることで、スランプに陥ることも減ります。

加えて、立ち上げたNPO団体では自分自身で組織のマネジメントをする必要があります。業務の中でメンバーの気持ちを汲み取ったり、あるいは相談に乗ったり……という過程を通じて、本業で自分と接する上司が「自分に何を求めているのか」考えて仕事に臨めるようになったそうです。上司がどんな意図を持っているのか、グループマネジメントにはどのようなビジョンがあるのか。NPOという場でいつもとは異なった視点を持ち、リーダーシップをとるようになったことで、平野さんの中では多くの学びがありました。

「自分が本業で上司に取られて”不適切だ”と思った態度はNPOでは取らないようにしています、
反面教師にしているんです」という平野さん。思わず笑いが起こる場面も。

自分の所属先が増えること、それはすなわち人間関係を分散させることでもあります。「自立とは依存先を増やすこと」というキーフレーズは障害がある当事者が社会との関わりを持つ際にしばし聞かれるものですが、働く場の人間関係においても同じことが言えそうです。人間関係の悩みは障害の種類や有無にかかわらず避けては通れないもの。ひとつの職場にとどまる必要は、もはやなくなってきているといえます。もし自分に合う選択肢がその場にないなら、環境を変えること、または平野さんのように新しく作ってしまうことも可能です。

「お互い様」で、変わるもの。:平野さんが大切にしていること

そんな平野さんが一番大切にしていること。それは『Give and Take(ギブ・アンド・テイク)』の精神だそうです。たとえば、車椅子ユーザーの平野さんにとって、靴下を履く、コピー機で書類のコピーをとる、等の作業にはかなり時間と労力がかかります。もちろん自分ひとりでもなんとかならないことはないのですが、そこで何十分と時間がかかってしまうと自分も疲れるし、チームで作業をするときには大きなタイムロスになってしまうことも。障害がある人は周囲から一方的に何かをしてもらう、つまり「テイク」の状態がどうしても多くなってしまうのですが、それだけだと心が苦しくなってしまう、と平野さんは言います。平野さん自身、職場で困っているメンバーがいないか気を配り、自分の得意な技術で「ギブ」を返すようにしているそう。

「どのインタビューにもこの言葉を自分のポリシーとして答えています」と断言する平野さん。

自分にとって難しいことや、頼めることは無理をせず誰かにお願いする、あるいは手伝ってもらう。その場合は、自分の得意なことで相手やチームのだれかを助ける。職場でのこうした「お互い様」の精神は、障害の有無にかかわらず自分の心や体の負担を減らすだけではなく、チームの作業効率や生産性を高めることにも繋がります。

本業と副業、ふたつの環境を上手く「利用」して人生をより豊かに──。

「どんな出会いも無駄にしたくない」と明るく語る平野さんのバイタリティの秘密はここにあるのかもしれません。

ここまで読んでいただきありがとうございました!実際のインタビューはこちらの動画から視聴することができます。ぜひご覧ください!

障害による進路変更と向き合う|キャリアライブ No 002 平野裕人さん 前編


自分の意思で世界を広げる|キャリアライブ No 002 平野裕人さん 中編


2足のわらじだからこその学び|キャリアライブ No 002 平野裕人さん 後編


最後までお読みいただきありがとうございました!

主催団体:特定非営利活動法人Collable


平野さんが活動しているNPO団体「NPO法人国際障がい者活躍社会創造協会」の公式ホームページはこちら!


ボッチャの公式サイトはこちら!インタビュー動画を視聴して「ボッチャ」に興味を持った方はチェックしてみてください!





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