なぜ「やる気」は長続きしないのか―心理学が教える感情と成功の意外な関係
[Book Review]
Emotional Success: The Motivational Power of Gratitude, Compassion and Pride (なぜ「やる気」は長続きしないのか―心理学が教える感情と成功の意外な関係) by David DeSteno, 2018
こんにちは。
ふと夜、外に立つと程よく夜風が涼しい季節になりました。
夜道っていいですよね。私はよく家の周りを意味もなく徘徊したりします。
するとなんだか世界にいるのは自分だけ、思考に浸るのもよし、ボーっと立ち止まって東京の薄汚い夜空を 眺めるもよし。
何をしても誰にも見られない。これって私が世で言ういわゆる中二病、陰キャの部類だからですかね。
というか、この間、塾でアルバイトをしていたら、小学生が同級生のことを「自称陰キャがきた~」とかいってからかっていたのを見ました。もちろん、冗談というか、たいして意味も分からず言っていると思うので、いじめとかではないですが、なんだか時代の流れを感じました。
陰キャ陽キャという価値基準の波が小学生まで来ているのか。。
自分が小学生の時はどんな若者言葉を使っていただろうか。。
なんか思い出したのは、全然関係ないけれど、同クラの’陽キャ’男子が女性の先生に「どーてーってなーにー!!」とニコニコの笑顔で聞いていて、さばさば系の女性の先生が普通に辞書上の意味を淡々と返し、男子たちが喜ぶ、みたいなしょうもない場面でした。(今考えるとザ・セクハラだ)
さてさて、与太話は置いておいて、
今回はデイビット・デステノ先生の「Emotional Success:The Motivational Power of Gratitude, Compassion and Pride」です。
(*David DeSteno is a professor of psychology at Northeastern University, where he directs the Social Emotions Group. At the broadest level, his work examines the mechanisms of the mind that shape moral behavior.
デイビットデステノ先生はアメリカ・ノースイースタン大学心理学部の教授。社会感情団体の代表。広義に捉えると、彼の研究は倫理的行動を形作る心のメカニズムを検証するものだ。)
邦題は「なぜ『やる気』は長続きしないのか」ですが、元の題名を直訳すると「感情的成功:感謝と思いやりと誇りの、モチベーションを高める力(または自制心(?))」です。
おそらく後者の方が如実にこの著書の伝えたいメッセージが表れていると言えるでしょう。
まさに、この著書のテーマは感謝と思いやりと誇りという社会的感情を普段から持っていれば、結果的に無理やり自制心をひねり出すことなく、モチベーションやいわゆる「やり切る力(like grit?)」を高めることができるのです。
これらの社会的な感情と言うのはいわゆる小学校で習うような「道徳」で扱うような内容に近いのではないでしょうか。
ある意味、これらの感情を持てば、自分の肯定感や人間関係がよくなり、セルフイメージが良くなりそうということは自明の事実のように思えますね。
でも、このストレス社会や様々なディストラクション(誘惑)がある世界ではこの基本的倫理が薄れているかもしれません。
大事なことを思い出させてくれる本と言えるでしょう。
プラス、この本が秀逸な点は、これらの感情を、現在、多くの人が苦しむ問題である「自分の立てた目標に対してどうすれば物事をやり切ること」の成功に結び付け、それらをアメリカ各所で行われた実験結果を用いて、科学的に証明していることです。
人間は基本的に大きな目標があり、それに対して短期的な快楽を犠牲とのトレードオフを求められるケースは多々あります。最近は特に成功とやり抜く力が強く関連があることは良く知られた事実であると言えます。
しかし、同時に人間は未来の自分の姿や得られる結果というのはなかなか想像が難しいのです。
また、未来は不確実です。よく最近は「VUCAの時代だ」なんて言いますね。(なんか先見の明を持っている風に就活市場で使われる常套句的になっているのが鼻もちなりません(笑)ただ不確実性に対応できる人材になるという考え方には賛成です)
人間は基本的に意思決定において不確実性を嫌うのです。
だから、結果的にダメだと頭でわかっていても目の前の誘惑に負けてしまいます。
著者によると、このように「頭でわかっている状態」すなわちロジック的な脳・自制的な脳(本書ではexecutive function(だった気がする))を用いて自制心を養うことが正しいとされてきたと言います。
しかしそれがうまくいかないことは科学的にわかってきていると言います。
そしてその時に出てくる解決策が「もっと感情をうまく活用しよう」と言うものです。
そしてその感情のなかでも思いやり、感謝、誇りのような社会的な感情が大事だといいます。
長くなってしまったので、また次回詳しくお伝えしていきたいと思います。
ここからは詳しい話になるのでしっかりと本を読みたい方は、記事を読む前に本を読んだ方がいいでしょう。盛大なネタバレになります。
ここで一つ、ちなむと、この本はもしあなたが英語を読めるのなら、原書を読んだ方がいいかもしれません。これは決して本書の邦訳が悪いというわけでは毛頭ありません。(むしろ読みやすいと思います!)
でもこれは心理学の本全般に言えるのですが、専門用語、とくに心理学のようなあいまいな表現が多い学問(例えばempathy, sympathyをどう訳を分けるかのような。)であると言えるので、和訳が読みにくいことは多々ありあます。
どうやらAmazon様でも原書が売ってますので、是非、購入してみてはいかがでしょうか。
今日はここまで。おやすみなさい。