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第三の小話「バイオリニスト」
むかしむかし、あるところに、一人の青年がおりました。
青年はプロのバイオリニストを目指しており、片時も離さずバイオリンを側に置き、食事もろくに取らず寝る間を惜しんで必死に修業していました。
しかしどれだけ練習しても、他のバイオリニスト達に抜かれていくばかり。
青年はとても焦りました。自分が劣っているのは自分の努力が足りないからだと思いました。青年はもっともっと練習しました。
手に豆ができ血が出
第五の小話「天国の母」
むかしむかし、あるところに、一人の悩める少女がおりました。
今宵は、そんな少女が見る不思議な夢のお話。
私には、つらい時いつも見る夢がある。
白を基調とした明るい庭園で、そこには色とりどりのバラが咲いている。
庭園の中を進んでいくと白いあずまやがあって、そこには白いドレスを着た金髪の女性がいつも紅茶を用意して待っている。
「あら、いらっしゃい。お久しぶりね。」
「…」
「…また何
第四の小話「無個性人間」
むかしむかし、あるところに、一人の青年がおりました。 青年の住む国は、皆それぞれ個性と呼ばれる異なる色を持っておりました。
今宵は、そんな一人の青年のお話。
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僕には生まれつき個性がない。
この世界に住む人は皆、個性を持っている。個性はやがて色に変わり、その人を表すものとして、外の世界に放出される。
でも、僕には生まれつき、その"
第二の小話「ふるびたおうち」
むかしむかし、あるところに、一件の古い屋敷がありました。
屋敷の壁にはヒビが入り、全体が朽ちて今にも崩れ落ちそうでした。
その屋敷には一人の女の子が住んでいました。彼女は何百年も前からずっとその屋敷で暮らしていました。
ある日、1人の少年が屋敷に訪れました。
少年は毎日仕事の途中でこの屋敷の前を通りかかっており、誰もいないはずの屋敷の窓辺に女の子が佇んでいるのを見つけ、不思議に思い訪ねてみること
第一の小話「大食い男」
むかしむかし、太った大食いの男がおりました。男は食べることが大好きで、朝から晩まで食べる事ばかり考えておりました。
月曜日。男はステーキを食べました。ジュージューと音を立てる肉にナイフを入れると、肉汁がジュワッと溢れ出て、男はほっぺたを蕩けさせながらステーキを頬張りました。
火曜日。男はわたあめを食べました。フワフワのわたあめを頬張り舌の上へ載せると、わたあめは一瞬で消えてしまいました。男はそ