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文学フリマで購入した本『オクシモロン』感想
今年10/27に開催された文学フリマ福岡に参加するにあたって、事前に同じようにフリマに参加されるnoterさんたちをチェックしていました。
ばっつもさっちもさんも、今回の福岡が初参加ということもあって、どんな本を書かれる方なんだろうと。
まず、本のタイトル『オクシモロン』に興味を持ちました。
有難迷惑とか、キモかわいいなど、反対の意味を持つ言葉を繋げて伝える語法や修辞法のことだそうです。
このタイトルだけで複雑な心理を描いた小説なのかなと想像していました。
初出店ということでしたが、しっかりと文庫本に仕上げておられて凄いな~と思っていたら、第55回九州芸術祭文学賞(地区優秀賞)とプロフィール欄に書いてあって、なるほどと合点がいきました。
当日、早々と自分たちのブース設定を終えることが出来たので、一般のお客さんたちが殺到する前に手に入れようと、ばっつもさっちもさんのブースに急ぎました。
おかげで思いがけず『0000001』とカウントされた本をGET!
最初の購入者となれたのでした。
でもそれが大正解。完売されたそうで、フリマが終わってから行ったのでは遅かったと知りました。
さて、文学フリマ終了後。
お祭りの後の抜け殻感もなく日常に戻って、当日手に入れた本を順次読み始めました。
最初に手に取って読み始めたのが『オクシモロン』だったのですが、数ページ読んだだけで「これは本腰を入れて読まなければ!」と身構えてしまいました。
純文学ど真ん中で、しかも著者の哲学がびっしり詰まってそうな予感がしたので、日頃ファンタジーや漫画に浸っている私にはハードルが高く感じました。
日本を代表する文豪たちや、海外の文豪たちの本を読み漁っていた学生だった頃の自分を思い起こし、私だって半世紀以上も生き抜いてきた人間なのだから、読み解くことだって出来るはずと、勇気を振り絞り(笑)改めて『オクシモロン』を手に取りました。
『オクシモロン』は6篇の短編からなる短編集です。
1話目の『ありきたりな特別』では、謎かけを問われているような気分になりました。
『オクシモロン』とは矛盾する事柄を表現する言葉。
スキだけどキライ。会いたいけど会いたくない。
恋愛では複雑な心理状態をこんな言葉で表現することもありますよね。
特に若者たちの恋愛ではよくあること。
この第一話では、謎かけのようでもあり、男女の駆け引きのようでもあり、お互いにお互いの深層を探り合うような、意味深な会話が交わされます。
二人が交わす会話や表情、纏わりつく空気に緊張感が読み手の私にも伝わってきました。
この『オクシモロン』を読み進めていて、なぜか関係ないのにカフカの『変身』を思い出していました。
自身の存在価値を疑いその内面的な苦悩や矛盾に悩み悶え苦しむ姿を描いた物語で、『オクシモロン』の6篇それぞれに登場する主人公たちは、同じような苦悩を抱えているように思えました。
2話の『幸せの無人街 アンソゴモラ』にしても、幸せの条件は揃っているのに最後のピースが見つからないという面倒くさい展開。
自分探しをしている最中には、醜い自分と対面したり、ぐちゃぐちゃと内面を引っかき回して潰してしまったり。
そんな試行錯誤、周章狼狽、右往左往した結果、最後のピースが現れる。
それは一段階ステージが上がった状態だったり、成長した自分の姿だったりするのではないか?
そんなことを考えさせられました。
読書は主に夜寝る前にしていたけど、この本は寝る前の読書には選ばないようしました。精神性の場面だったり、実際の物語の展開だったりが絶えず交差していて、睡魔をぬぐいながらの頭では飲み込めないと、早々にあきらめてしまったから(笑)
何度も読み返したページもあったし、「なるほど」と文章のレトリックに驚嘆したり、導かれて読み終えた時、何とも言えないエモさを感じました。
ただ第五話『黒い病室』の主人公の女性には、理解はできるけど共感は出来なかったかな。
読書感想にしてはとっ散らかっていて、的を得ていない内容になってしまったけど、文学を愛する人たちには絶対的にお勧めできる本だと思っています。
何度も読み返したい本だし、読み返すたび違う感想を抱くのではないかと思います。