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がん治療記x受験奮闘記

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コロナ禍でのがん治療をしながら地方国立大学薬学部に現役合格した大学生の書くがん闘病記x受験奮闘記 がん治療の中で経験した症状や精神疾患についてや 共通テスト元年の大学受験について…
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#悪性脳腫瘍

【がん治療記x受験奮闘記】マグミット錠

 手術から3日後、便秘により腹部が膨れ苦しくなるようになった。圧迫感があり痛みと嘔気に襲われた。それを看護師に伝えると張っているが腸は動いていると言われた。そこで医師から下剤としてマグミット錠を処方された。この薬の名前を聞いたときマグネシウム(Mg)がすぐに思い浮かんだ。酸化マグネシウム(MgO)は塩基性酸化物であるため、胃の中で塩酸(HCl)を中和する薬として用いられると東進の化学の授業で教わっ

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【がん治療記x受験奮闘記】手術後

 脳神経外科の病棟に戻ってすぐに尿道カテーテルを取り外してもらった。取り外す瞬間、とても痛かった。下半身を露出させなければならない恥ずかしさとその痛みのせいで気分は最悪だった。
 トイレに行くと鏡に自分の顔が映る。酷い顔だった。頭には包帯が巻かれており、顔はむくんでいるようだった。また、シャワーを浴びていなかったせいで髪の毛が油でギトギトになっていた。余計に自分の顔が嫌いになる。
 手術後数日間は

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【がん治療記x受験奮闘記】手術前

 2020年8月11日、入院初日、人生初めての入院に臆することなく勉強する気満々で病院に向かった。普段は6時半~7時に起床し23時まで勉強してから寝る僕にとって、6時起床21時就寝には少々不満であった。しかし僕は男子校の生徒であるため、女性がいるというだけでその不満は解消された。
 初めての病院食は想像よりは良かった。病院食は不味いというイメージがあるが、そこまでではないと感じた。美味しいかと言わ

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【がん治療記x受験奮闘記】入院前~意志~

 入院前僕は手術やがん治療よりも受験に対する不安の方が大きかった。手術は全身麻酔で行われるため、寝ていれば終わると軽視していた。がん治療中も普通に勉強ができると見くびっていた。だから僕は今後の受験勉強のことばかりを考えていた。前に述べたように現役合格をどうしても譲れなかった。なぜかと言われると返答に困る。浪人は別に悪いことではない。1年足踏みをするだけ。A判定を取っていても浪人することだって普通に

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【がん治療記x受験奮闘記】入院前~浪人~

 僕にとって浪人という言葉はかけ離れた存在だった。しかし脳腫瘍があると分かってからその言葉は急に僕の前にくっきりと表れ始めた。それでも僕は浪人をしたくなかった。浪人なんて受け入れられるはずがなかった。高3の夏の時点で第一志望A判定を取ったのに、浪人なんて有り得ない。そう考えていた。そのため入院前にした学校や予備校での面談で僕は一般入試での第一志望現役合格を目指す意志を示した。
 しかし、両親はそれ

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【がん治療記x受験奮闘記】脳腫瘍の発見(2)

2020年8月

 大学病院での造影剤を使ったMRI検査により胚細胞腫瘍の可能性が高いことが分かった。僕はその中でもジャーミノーマである可能性が高いと言われた。しかし、それでも治療を開始するわけにはいかないと医師は言う。もしジャーミノーマであれば放射線治療と抗がん剤治療を並行するのだが、ジャーミノーマでなかった場合に放射線治療の受け直しができないからである。そのため、治療の前にジャーミノーマである

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【がん治療記x受験奮闘記】脳腫瘍の発見(1)

2020年7月

 学校が休校になり塾も閉まりほかの受験生が混乱する中、僕の成績は調子が良かった。一人っ子で両親が共働きのため自宅での勉強を妨げるものは少なく、模試では既に第1志望のA~Bの判定は取れるようになってきていた。このことで心の余裕が生まれ、合格することを目標とするのではなくどれだけ高い順位で合格できるかに重点を置いて考えるようになった。東進英語科講師、渡辺勝彦氏は言う。「我々が目指すの

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【がん治療記x受験奮闘記】緊急事態宣言

 ほとんどすべての学生は自宅学習を強いられた。自宅では勉強できないという人も多かったかもしれないが、その中でも受験生は争わなければならない。そこで僕は勉強を楽しむことに重点を置いていた。YouTubeチャンネル、予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」、の動画を毎日見ていた。彼の授業動画は面白くわかりやすい。知的好奇心を満たすのに最適である。PCを開くと東海オンエアの動画を見てしまう僕にとってこのチ

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【がん治療記x受験奮闘記】修学旅行の中止

受験生になる前の最後のビッグイベント、修学旅行が新型コロナウイルスによって中止に追い込まれた。中高一貫校に通っていた僕にとって5年間楽しみにしていたそれはあっけなく消えた。高校2年生の最後に修学旅行に行きそこで切り替えて受験に挑むという予定が崩れ、気合の入りきらないまま受験生を迎えてしまった。