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【読書記録6】音楽に関心のない人にも読んでほしいフランツ・リストの生涯

 皆さんいかがお過ごしでしょうか?

 今回紹介する本は、浦久俊彦著『フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか』(新潮新書)です。

 本書では、フランツ・リストの生涯が描かれており、幼年時代からピアニスト時代、さらに宮廷学長や聖職者の晩年までを知ることができる本になっています。

教養としての西洋音楽

 私は、普段クラシックよりもジャズをよく聴くので、リストは「ラ・カンパネラ」ぐらいしか聴いたことがありませんでした。けれども、そんな私でも本書は楽しく読むことができました。それは、著者の浦久氏が本書を音楽の専門書ではなく、一般的な教養書としてなるべく多くの人に読んでもらおうとしたからだと思います。

 なぜ本書が教養書として面白いのか、それはフランツ・リストが登場する社会的・政治的・音楽的背景を説明してくれている点だと思います。特に、当時のヨーロッパを巡る芸術文化に関する姿勢やパリのサロンの様子、ピアノの技術革新などは興味深いです。

天才の人間性を描き出す

 往々にして、天才的な偉人に関する本は、その人物のウンチクに終始し、本当かウソかもわからない逸話が並べてあるだけということがあります。
 しかし、本書はリストの天才的なエピソードだけでなく、祖国がないことの苦悩や、パリでの苦労や挫折、晩年の孤独なども描かれています。そのため、人間フランツ・リストを知ることができます。

 ただ、そうは言ってもリストの天才性や女性人気はすさまじかったようです。

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 このご尊顔だけでもすごいですが、ピアノで超絶技巧までも見せられたら、多くの女性が失神するのも無理はないですね。
 ひとりのピアニストと、一台のピアノによる演奏会である「ピアノ・リサイタル」を最初に開催したのはリストだったそうです。

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 ただ、本書で刺激的だったのは、「彼女たちは、失神したというよりも、失神したかったのかもしれない」という浦久氏の指摘です。これを、ブルジョワ的価値観の勃興に絡めて明快に説明してくれています。

リストの功績

 最後に、リストの音楽的側面についても触れておきます。リストはヨーロッパ中の街で、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトという「古典」を頻繁に演奏したことで、彼らの名や楽曲を広めました。

 また、リストと1年違いで生まれたのが、あのショパンです。少し引用します。

リストとショパンというピアノ音楽を象徴するふたりが、近代ピアノの誕生を待ちかねたように同時期に、しかも東欧から誕生したことに注目してほしい。これは、西洋音楽の革命ともいえる大事件でもあった。

 もちろん、当時の2人はライバル視されていましたが、お互いに相手に対してリスペクトを持っていて、共演もよくしていたそうです。ショパンが友人宛に書いた手紙には、次のようなことが書かれています。

「いま、リストが僕の練習曲を、僕の横で演奏している。自分の曲をどう演奏すればいいか、僕は彼から盗み取りたい」

 一方、リストは晩年にショパンについて次のような言葉を遺しています。

「ショパンは、まさに魔術的な天才でした。彼に比肩する者は誰もいません。芸術の空には、ただひとり、彼のみが光り輝いているのです」

 お互いの相手に対する敬慕の念があって、素晴らしいですね。

 100年に1人の天才が、同時期に同じ世界で2人も存在するのは、その事実だけでとても魅力的です。
 現代だと誰になるのでしょうか。リストとショパンの2人と比較すると陳腐になってしまうかもしれませんが、サッカーの世界だとリオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドでしょうか。何か良い組があれば教えてください。たぶん知らないだけで、いるのだと思います。

 今回は以上です。

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