見出し画像

クラウドゲーミングは流行するか? 鍵は「新しい体験」の創出

こんにちは!スゴロックスです。

「5Gとの相性抜群」と称されていたクラウドゲーミングですが、5Gが普及した2024年の今、続々とサービス終了が発表されています。

最近の情報によると、国内のクラウドゲーミングプラットフォーム「Gクラスタ」が、2025年の2月末をもってサービスを終了することを発表しました。

また、Googleのクラウドゲーム事業「Stadia」は2023年1月にサービス終了。Googleはクラウドゲーミングの領域から撤退する形となりました。

ソフトバンクが提供するNVIDIAのクラウドゲーミングサービス「GeForce NOW Powered by SoftBank」も2024年3月にサービスを終了しましたが、「GeForce NOW」自体は、NVIDIAが直接運営する形式で、今も国内でサービスが続いています。

現在も提供されているクラウドゲーミングサービスとしては、マイクロソフトの「Xbox Cloud Gaming」、ソニーの「PlayStation Plus」、NVIDIAの「GeForce Now」などが挙げられます。

ですが一方で、各社の決算発表を見ても、クラウドゲーミングが利益を出しているという表現は見当たらず、残念ながら苦戦している可能性が高いことがうかがい知れます。

今回のコラムでは、クラウドゲーミングの第一陣が苦戦している理由を考察し、そのうえで「クラウドゲーミングが普及するには何が必要か?」について、僕たちなりの考えを書いていこうと思います。

クラウドゲーミングはなぜ苦戦しているのか?

なぜクラウドゲーミングが苦戦しているのか。
それは、「インターネット環境への依存度が高く」、「魅力的なコンテンツを十分に用意できていない」からだと思います。

そもそも、クラウドゲーミングとは何を指しているのでしょうか。
「GeForce Now」を運営しているNVIDIAは、クラウドゲーミングを下記のように説明しています。

クラウド ゲーミングとは、セキュアなデータセンター内にある強力な産業用 GPU を使用して、ユーザーが好きなゲームをインターネット経由でストリーミングしてプレイできるサービスのことです。

NVIDIAの公式ブログより引用
引用元:https://blogs.nvidia.co.jp/2021/03/08/what-is-cloud-gaming/

つまり、ゲームで発生する諸々の処理は、企業が持つ高性能GPUで行われます。
そして、それにより映し出された映像をストリーミング再生することで、ゲームをプレイできる、ということです。

この仕組みにより、ユーザーは高性能なハードを所有せずとも、高いスペックが求められるゲームをプレイできます。

高価なハードへの「先行投資」が不要になるため、より多くの人々が気軽にゲームを楽しめるようになる可能性があります。

一方で、クラウドゲーミングにはインターネット環境への依存度が高いというデメリットが存在します。

前述した性質上、クラウドゲーミングには安定した高速インターネット回線が必要となります。

また、対応しているゲームタイトルが限られていることも課題です。
クラウドゲーミングサービスで遊べるゲームタイトルは、プラットフォームごとに異なります。全てのゲームに対応しているわけではありません。

Forbes Japanも、Googleが提供するクラウドゲーミングサービス「Stadia」が失敗に終わった要因のひとつとして、「コンテンツ不足」をあげています。

技術的課題を乗り越える、6Gと光電融合技術

では、今後クラウドゲーミングを盛り上げるためには、何が必要なのかを考えていきたいと思います。
まずは、冒頭に述べた「インターネット環境への依存度が高い」問題を解決するため、「通信速度」と、「サーバー側の処理力」の二つの側面から考えていきます。

高速かつ大規模通信を目指す6G

まずは、通信速度の問題について。
一つの解決策として、5G以上の高速・大容量通信を可能にする「6G」には、大きな可能性があると思います。

6Gの研究開発を進めるNTTドコモは、具体的に6Gで何を実現させるかを発表しています。

引用:NTTドコモ公式発表より引用
https://www.ntt.com/bizon/6g.html

上記のうち、クラウドゲーミングには、「超高速・大容量通信」と「同時大規模接続」が関連するかと思います。
具体的には、通信の遅延を5Gの10分の1に、同時接続数を5Gの10倍にするとしています。

同社は、2030年頃に6Gのサービス提供開始を目指しているため、あと5年ほどで実用化されるはずです。

処理能力を向上させる光電融合技術

次に、「サーバーの処理能力」の課題について考えていきます。
この問題の解決策として、NTTナノフォトニクスセンタがめざしている「光電融合技術」があげられます。

光電融合技術とは、今まで「通信」部分にしか使用されていなかった光回路を、「処理」部分、つまりコンピューターの中にも使用する技術構想です。

この構想が実現すれば、今まで電子回路で行われていた内部の情報伝達が、光回路で行われるようになります。コンピューターの内部処理は、文字通り「光の速さ」で行われるようになるため、サーバーの処理能力も飛躍的に上昇するでしょう。

コンテンツ不足の課題、どう解決する?

とはいえ、いくら快適な通信環境、処理環境を用意したとしても、魅力的なコンテンツが無ければユーザーは集まらず、サービスとして成立させることは難しいでしょう。
冒頭に述べた「魅力的なコンテンツを十分に用意できていない」という課題の解決も必要です。

すでにリリースされているゲームをクラウドに誘致する

この課題を解決する一つの方法は、今まで通り「すでにリリースされているゲームを誘致する」ことですが、ゲームメーカー側の旨味が少ないため、この方法はやや難易度が高いと感じます。

クラウドゲーミングの運営会社視点で見ると、ユーザーを増やすために、多くのゲームタイトルを誘致したい。
一方で、ゲームメーカー目線で見ると、ユーザー数が少ないクラウドゲーミングサービスに自社タイトルを提供しても、旨味が少ない。

まさに「卵と鶏」の関係です。
既にリリースされているゲームを自社のクラウドゲーミングサービスに誘致するには、この負のスパイラルを打開する必要があります。

クラウドならではの「新しい体験」を作る

もう一つの方向性として、「クラウドゲーミング独自のタイトルを作る」という考え方があります。言い換えると、クラウドゲーミングならではの「新しい体験」を作ることです。

ゲームの歴史を紐解いてみると、アーケードゲーム、コンシューマーゲーム、オンラインゲーム、ソーシャルゲームなど、技術の発展に伴ってさまざまなゲームの形態が誕生してきました。
こういった新しいゲームの形態が普及したのは、それぞれの形態で、今までには味わえない「新しい体験」を提供できたからであると考えております。

そう考えると、クラウドゲーミングも「通信速度とGPUの処理能力の向上」という技術革新から生まれたゲームのいち形態であるため、既存のゲームを誘致するだけではなく、クラウドゲーミングらしい「新しい体験」を提供できる面白いゲームタイトルを生み出すことも、同じくらい重要であると考えます。

では、クラウドゲーミングが提供できる「新しい体験」とは何か。
クラウドゲーミングの強みは「高性能なハードウェアを持っていないユーザーでもゲームを遊べるようになる」ことです。
これは言い換えると「プレイヤーの分母が、今までの比にならないほど増加する」ことであるともとれます。

であれば、「同時に接続できるプレイヤー数の多さ」を最大限に活かして新しい体験を作りにいくのは一つの方向性だと思います。
あくまで一例ですが、たとえば「50万人のプレイヤーが同時参加するバトルロワイアル」などはどうでしょうか?

100人単位での同時参加のバトロワは「BattleField」を筆頭に多くのゲームで実現されており、根強い人気を博しています。
ですが、同時対戦は100人で本当に十分でしょうか?

たとえば、三国志を代表する戦いの一つに「赤壁の戦い」があります。
この戦いの従軍人数は所説ありますが、魏軍20万人と、呉・劉備の連合軍約2万2千人が衝突した合戦であると言われています。

三国志をテーマにしたゲームではほぼ必ず取り扱われる赤壁の戦いですが、その多くはいわゆる「将」を操作して、一般兵卒はNPCであることがほとんどです。

これを、動きの読みやすいNPCではなく、戦場にいる一人一人にプレイヤーを入れてみたら、どうでしょうか?

よりリアリティのある、より緊張感のある、より没入感の高い合戦型の対戦ゲームが誕生する可能性があると思います。

そういった意味でも、クラウドゲーミングは、ただの技術的な進化にとどまらず、新しい体験を生み出せる可能性があると感じます。新しい体験を生めるかどうかが、多くのユーザーをクラウドゲーミングに惹きつけ、ユーザー数が増える鍵となるはずです。

どんなに素晴らしい技術でも、どんなに素敵なグラフィックでも、そこで味わえる体験が面白くなければユーザーは増えない。
僕たちはそう思います。

サーバーベースでないとできない遊びは何か?

最後に、今回のテーマ「クラウドゲーミング」について、西Pのコメントを紹介。

ここ数年のハードの進化もあり、現在のクラウドゲーミングは、サービス運営企業の「コスパ」が悪いと言う印象を持っています。
ですが、ゲームの歴史を振り返ってみても、ソフトウェアの「コスパ」は、必ずリクープされて、新しい仕組みに移行しています。
サーバーセンターとクラウドゲーミングの関係も、おそらく同じでしょう。
(償却済みサーバーとかは別ですが…)
クラウドゲーミングも、いずれ盛り上がるタイミングが来ると思います。
そのタイミングで、その変化や技術的な対応に乗れるか?
これも大事な先見の明だと思っています。
スゴロックスは、敢えてそこも大事にウォッチしていくつもりです。
そして、その時にクライアントベースから、サーバーベースじゃないとできない遊び方を模索するつもりです。
「サーバーベースじゃないとできないことは何か?」というテーマについて、これからもイメージを膨らませていきます!

今回は「クラウドゲーミングが越えるべき課題と、流行するための鍵」について語ってまいりました。

クラウドゲーミングはまだまだ進化していく分野だと思いますし、今も多くの企業が技術を磨いたり、サービスをよくするための次の手を準備しているはずです。

例えば、ソフトバンクが「GeForce NOW Powered by SoftBank」の提供終了という判断をした際、NVIDIAが「日本から完全撤退する」という選択ではなく、NVIDIAが直接運営する「GeForce Now」に変更する選択をとったことを考えると、NVIDIAはクラウドゲームの勝ち筋をどこかに見出しているのかもしれません。

NVIDIAはGeForceをはじめとしたゲーム向けGPUに強みがある企業です。
彼らがAIデータセンターに最適化されたGPUを生み出したように、「クラウドゲーミングに最適化されたGPU」を研究開発していても不思議ではありません。

また、技術的課題を解決するにあたって6Gにも言及しましたが、6G以外の技術的イノベーションが起こる可能性も十二分にあるはずです。
6Gの商用普及は2030年ごろと言われています。5年もあれば、上記以外の領域で技術革新が起こり、思いもよらない方向からクラウドゲーミングを押し上げるかもしれません。

例えば、スピードと低遅延をその魅力としている衛星通信も、一つの可能性として存在すると思います。

この記事で執筆させていただいたことは、あくまで僕たちなりのひとつの意見だということに、ご留意いただけましたらと思います。

まだまだこの領域は奥が深いので、ご興味ある会社、開発者の方は、ぜひ、僕たちと意見交換しませんか?

スゴロックスは気軽にお話できる会社を目指しています。ライトな御相談、ウェルカムです。

このスゴロックスのnoteで取り上げて欲しいトピックやキーワードがありましたらこちらまで‼

ぜひぜひ、皆さんのコンタクトをお待ちしております!

スゴロックス公式webページ: https://sugorocks.com/
スゴロックス公式X: https://x.com/Sugorocks_O
スゴロックス公式facebook: https://www.facebook.com/sugorocks/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?