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人間たちは愚かなのでこの世の樹をほとんどすべて切ってしまったという。それで仕方がないので…
「イネスコがないの」 芝居がかった口調でアガサがつぶやくので、フロアの一同は皆、作業を止…
街中が花で溢れている。 都会の街角の、忘れ去られた茶屋の木格子越しに外を眺めながら、彼ら…
この国の人々は、質問してばかりいる。 『これがしたいのですができますか?』 『あれもした…
あたり一面雪景色だ。 昨日は晴れていたのに今日は朝から吹雪だった。 山の天気は変わりやす…
辿り着いた町には、ニンゲンがいなかった。 どの店もガランとしているが入り口には"営業中"…
チロルが帰ってこないんだ、と瀧川が言う。 昼休憩のことだった。 二人で煙草を吸いながらコーヒーを飲んでいると、いつもより長めに紫煙を吐き出してから瀧川が言った。 チロルが帰ってこない。 田中は自身の身体の中に芳ばしい香りが充満するのを感じながら、考えた。 チロル、とは誰のことだろう。 あるいは、なんのことだろう。 通常の人であればここで質問できたかもしれない。 しかし田中には人の話を5割程度しか聞いていない自負がある。 そのため、もしかすると過去に自分はチロルについ