シツモンの国
この国の人々は、質問してばかりいる。
『これがしたいのですができますか?』
『あれもしたいのですができますか?』
どれもこれも法律で定めてあることばかりなのに、どこまでも連なるあの織物を読む人はどこにもいないらしい。
「こちらはこのような方法で可能です。」
「申し訳ございませんがこちらは受け付けておりません。」
失礼のないように、ひとつひとつ丁寧に返事をする。顔も見たことのない相手に対して、何が失礼で何が失礼でないか、そんなことはわかりもしないのに。
すべての質問に答え終わったら終業、とされている。しかし、絶え間なく質問が届くので、最後に終業したのがいつだったか、もう覚えていない。就業規則が定められた頃には、もっと多くの人々が、自分の頭で考えていたのだろう。
休憩は食事のときだけだ。
最近は食事のために休憩しているのか、休憩するために食事をしているのかももう、わからなくなってしまった。
チョコレートをかじっている最中にも、新着のメールが届く。
やる気ない人さし指でポン、とクリックする。
『質問があるのですが、質問してもよろしいですか?』
ああ、頭がおかしくなりそうだ。
無言で椅子から立ち上がり、そのまま歩き出した。
どこまでも、
どこまでも。
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