「そこそこでいい」という需要
価値を提供する対象顧客は必ずしも最高のものを求めているわけではない。自社の製品やサービスは需要にマッチしているか、という話
自社で取り扱っている物やサービスにおいて、いいモノを提供しようというのはどこでも考えていることだと思う。
しかしながら、その自社目線でいう「いいモノ」というのは質の問題であって、必ずしも最高級グレードや高価なものである必要はないのだ。富裕層を対象としたビジネスなら求められる要素かもしれないが、そうではない顧客層であるならば、やはりその対象顧客の求めているもの、マッチしたニーズに即したものということになる。
その顧客層のどのカテゴリーで自社の強みが発揮できるかということにもよるが、必要以上に高性能のものや至れり尽くせりの手厚いVIPサービスがどの顧客層にもウケるとは限らないのだ。
富裕層とは逆に、できるだけ安価に済ませたい顧客層やその中間に属する顧客層がいることを意識しよう。
中間の顧客層、「そこそこでいい」という顧客層がある。その中でも細分化するとその顧客層にもあらゆる属性が存在するが、それは自社の強みや特性と照らし合わせながらよりマッチしたニーズにチューニングを合わせる必要がある。
弊社もターゲットの顧客層を設定するときには中間層の中でどこにリーチすればより価値を感じてもらえるかを念頭に置いて考えている。その設定を間違うと空振りを連続したり、期待外れと認識されてしまったりと労力に対して充分な成果を上げられない要素につながってしまう。弊社もその設定やチューニングに苦労した経緯があり、高価なものを売ってみたり、逆に安価なもので集客をしてみたりと色々と試しながら自社の最適値を定めたのである。
そして、そのニーズに自社の商品やサービスがマッチすれば面白いように売れる。「こんな業者を探してたんだよ」「こんな商品を待っていたんだ」と言われるようであれば、顧客層のチューニングが合ったのみならず、おそらくその市場はまだあまり開拓されていない可能性すらあるのだ。
そのように、同じ商売でもどこで誰に提供するかによって価値は大きく変わるのだ。自社目線で売れるはずの物が大きく外れることは大企業でさえよくある話。であるならば、小さくテストしながら様々な顧客層に当ててみて反応をうかがうことが重要になるのだ。
私自身も現場でお客様と色々な話をする中で、「この塩梅がいい」という理想を固めて市場の設定に役立てている。「現場の声を聞け」とは伝説の経営コンサルタントの一倉定先生の言葉だが真のニーズの断片は現場に落ちていることが多い。
理想の妄想を展開するのも結構だが、自社にとって理想のお客様は自身で声を集めてプロファイリングすることで輪郭ができていく。
私が「そこそこでいい」という需要に気が付いたのもそんなお客様の声の集合体から自然と形成されたものを俯瞰して見てのことである。
自社の製品やサービスに磨きをかけることも大事だが、理想の顧客の求めるものを深掘りしてお届けすることを磨くのも忘れてはならない。
細分化された顧客層には必ず自社の特性と価値が合致する存在があるはず。それを探すのも仕事のうち