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ネガティブは独特な臭いがする

ビジネスの取引きにおいて、相手が信用できるか否かを判断する際に直感はバカにはできない、という話

商売をしていると新しい取引先が増えるということがある。

それ自体は喜ばしいことであり、ある種、新規開拓は常に心掛けたいところではある。しかしながら、毎年増える新規取引先のすべてが自社にとって最適な取引先とはかぎらない。

先代の父が経営者だったころ、父の警戒心の無さもあったかと思うが、バブル崩壊、リーマンショックの後あたりはごっそりと既存の取引先が倒産したり、離れたり、売掛金を支払わず夜逃げしたりという中で、新しく取引きを申し出る会社もまた多かった。

時代による健全な新陳代謝という取引先の入れ替えであればよかったのだが、そういった混沌とした時期に新しく入る風は澱んだものも数多く、父は失った売上げや未払金、それによって膨れ上がった借金を取り返すという、ある種パニック状態の中で仕事をくれるのならどこでもいい、といった具合で調査もせず、手当たり次第に取引きを始めてしまう。

結果、新規取引先の数社は財務内容も最悪で、大型の案件を持ちかけては工事完了後、見事に姿を消すのである。

ただでさえ負債だらけの中、追い打ちをかけるように新たな負債がふくらみ、あっという間に倒産寸前の窮地に陥ったのであった。

そのタイミングで経営をバトンタッチした私は警戒心の塊で、売上げを伸ばすことよりも、どうしたら騙されないか、いい取引先はどうしたら見分けられるのか、そんなことばかり当時は考えていたような気がする。

そうした経験も悪いことばかりではなく、新規取引先に対しての調査の徹底や、万が一のことがあったときの自社のルールなどを強化した結果、今では資金繰りのあやしい取引先はゼロとなり、自社の財務内容もかなり回復してきたのだ。これもある種ケガの功名だろう。

そして今では、ある程度直感でその会社が取引きに値するか否かを判断できるようになった気がする。あくまでも直感の範疇なので確率は絶対ではないが、明らかに距離を置くべき会社の臭いがなんとなくわかるのだ。

先日、数年ぶりに仕事の依頼をしてきた経営者の要件を電話で聞いていたのだが、その会話の中でひっかかるポイントがいくつかあったのだ。直感が働き、多忙を理由にその案件はお断りをさせていただいたのだが、後日、その会社を知る共通の業者と打ち合わせをしていたところ、その業者からある事実を知らされた。

その業者が言うには「○○興業さん(先の会社)から最近連絡があったんだけど無視してるんです、2年前の未払いの工事が数件あるにもかかわらずしつこく電話をよこしてくるんで困ってるんですよ」ということらしい。

私のところにも連絡があったことを伝えると、「社長、受けちゃだめですよ、距離をおいた方がいい、断言します」と教えてくれた。

今回に関しては新規の話ではなく、以前付き合いのあった取引先だが、話す感じで危険な臭いをセンサーが察知したのだ。これが新規の話となると嗅ぎ分けるレベルは格段に上がる。事前情報が乏しいため、見定めるのが難しいのだ。

最終的には万が一逃げられても大ケガをしない程度の仕事しか受けない、と決めているがバブル崩壊、リーマンショックに継ぐ今回のコロナ禍という有事。しばらくはこういった不安定な話が湧いてくるのと予想して、今一度警戒心を強めていこうと思わされる出来事であった。

うまい話や急なお願い、ご無沙汰の連絡には一旦気持ちを落ち着かせよう。自社がつらい状況であってもこれらの話で状況が逆転することは絶対にない



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