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学校の学校⑼ 自分が生きることを(まず自分で)肯定する 坂口恭平『自分の薬を作る』論をニーチェから

 こんにちは。
 『ニーチェはこう考えた』を読んでいます。おもしろい! 『ツァラトゥストラ』を学生の時に読んで、挫折し、最近また読んでやっぱり「わからん」となり、千葉雅也先生が確かオススメしていたので、これを読んでみています。当然、『ツァラトゥストラ』が「わからない」というのと、『ニーチェはこう考えた』が面白いというのは全く別のことで、『ニーチェがこう考えた』を読むことと、『ツァラトゥストラ』を読むことは全然違うわけですけど、『ニーチェはこう考えた』は面白いです、よくわかります(いつか『ツァラトゥストラ』にも再チャレンジしないと)。(特定の哲学者についての哲学の入門書は、同じ哲学者についての者でも、なんか書いてあることが全然違う気がします。ハイデガー入門みたいなものを何冊か読んでいますが、何回入門しても違うところへ続く門な感じがします。)
 ニーチェは、自分が生きることを肯定すると言うことを考えたそうです。ちょっとざっくりなので、違っていたらすいません。理想を追い求めるのもだめ、社会や自分の現実に幻滅するのもだめ、なぜならどっちも自分が生きることを肯定することにつながらないからだ、というのがニーチェの言ったことのようです。めっちゃいいこと言うじゃんニーチェと思いました。

 昨日の話の続きを少ししましょう。「楽しいことだけしても生きていける」という話でした。これについて、私は今イメージする「楽しいこと」より「楽しいこと」は増えるというか創り出せる、「楽しいことだけして」という時にイメージすることはインプットが多くなるが、インプットとアウトプットはバランスをとらないといけないという話をしました。
 なんか元ツイート見たら、(私はそのツイートを批判しているのではなくて、そのツイートから思いついたことをたくさん書いているのですが)「やりたいことだけやって…生きていける」と書いてありました。「楽しいことだけしても生きていける」ではありませんでした、すいません。でもどちらにしろ、似たようなものかなと思いますが、なんでニーチェの話をしたかというと、生きると言うことに必要なのは、「自分が生きることを(まず自分で)肯定する」ということであって、それは学校の学校の授業の最初に言った「あなた自身が一番大事」ということです。
 で、「やりたいことだけやって生きる」という言葉は、その実行は素晴らしいとして、言葉は「やりたくないことをやっている自分」に対する幻滅、否定があって、その否定を背景にして「やりたいことだけやって生きる本当の自分」という理想があると思うんですね。いや、何が言いたいかというと、これ、どっちにしろ「自分が生きることを肯定する」ことになっていないのではないかと、『ニーチェはこう考えた』を読んでいて、気づいたんです。
 じゃあ自分が生きることを肯定するってどうやるんだって言われたら難しいんですけど、理想と幻滅はだめだということからまず考えたい。理想も幻滅も、今の自分を見ていない、今の自分を否定しちゃっているということです。これ、絶対気持ちよくない。「やりたいことだけやって生きる本当の自分」への希望というか理想を抱いて一時は元気になると思いますけど、それがダメだった時、また元気なくなると思うんですね。その本当の自分は、やっぱり理想的過ぎるので。だから「やりたいことだけやって」というのは、言葉が強すぎちゃって、嘘が入っちゃってる、言った人にうそをつくつもりもだますつもりも全くないと思いますけど、結果的には嘘が入っちゃってる、そう思います。
 だから「やりたいことだけやっても生きていけるよ」というんじゃなくて、そういう理想的な生き方が「今ここ」じゃないとこにあるよっていうんじゃなくて、「いま生きていることって、で、そのときにしているこういうことって実はやりたいこと、すでにやってない?」っていう話、あるいは「こうするだけで、やりたいことできるんじゃない?」っていう話が大事だと思うんです。「いま生きる私自信を、自分で肯定する」っていうことです。「もうやってるよね」っていうことです。「もうやりたいことだけやって生きる自分、ちょっとやっているよね」っていうことです。『自分の薬を作る』で坂口恭平先生がやっている、つまりいのっち電話でやっているのはそういうことであって、「やりたくないことはなんもやんなくていいよ!」「やりたいことだけやりなよ!」「本当の自分が別のところにいるよ!」って言うことじゃないと思うんです。「今そこにいる自分、めっちゃいい感じだから、こういうことだけちょっとやってみたら?」っていうのがあそこで書かれていることですよね。あの本読むと、わくわくするわけです。なんかどんどん重いものが取れていく、軽くなっていく、わくわく。お金の学校の言葉で言えば、流れてくるんです。でも、理想主義は流れてこない、「本当の自分がどこかにいるよ」 それじゃ流れてこないと思うんです。「いまそこにいるあなた、最高じゃん。でもね、もうちょっとこうしてみたら? そうすると、もっと楽しいんじゃん?」っていうことですよ。で「こうしてみたら」の具体が、時間割を決めるとか、企画書を書くとか、曼荼羅を書くとか、そういうことです。

 企画書を書くと、「今ここにはいない本当の自分」というなんか遠い理想を、今ここにいる自分に着地させることができると思います。というか、「したい・やりたい」がちゃんと今ここの自分にくっつくというか、そんなイメージです。企画書の内容を実行するにしてもしないにしても、現実的になる(ちょっとうまく言えない)。企画書書かないっていうのは、「本当の自分」っていう遠いものをずっと仮定している感じです。理想主義です。で、ある日思い立って、「本当の自分」を目指して急に動いてみるわけです。勇気が必要、変化に恐れはつきものだ、急に実行してみる。そうすると、上手く行かないわけです。うまくいかないと、きつい現実を突きつけられる。きついですよそれは。「本当の自分」になれない「自分」、企画書は、クッションになるわけです、クッションというか、めでぃあ? よくわからないんですけど、一回手繰り寄せる。手繰り寄せると、「早くやらないと」「早く本当の自分手に入れないと」「本当の自分を手に入れるにはちょっと冒険も必要だ」って焦ることがなくなります。始めようと思えばいつでも始められる、やめようと思えばやめられるものになるわけです、だからそれが自分です。今ここにいる自分。「やりたい自分」が今ここにいる自分になる。

 時間割を決めるのもそうです。本当の自分はこうだって思っても、感情は結局うまくコントロールできない。それよりも時間はコントロールできる。仕事でぜんぜん本を読む時間が取れなかった! 今日は一日本を読むぞ!と思っても、本読んでいるうちに夕方には孤独になって死にそうになったりします。なんかそれでずっとSNS見ている。私吉田カンゾーも、最近までそういう一日の過ごし方をしてしまうことがありました。コロナで家にいるようになって、時間割を決めるようになってからそういうことはなくなりましたが。そうすると、やっぱり「本当の自分」になれなかった自分っていうのが残る、今度はやっぱり人に会わないと寂しい!とか思って、人と遊んでお酒飲みすぎて失敗しちゃったり、だれかに依存しかけちゃったり、実は寂しいの前に、インプットしすぎっていうのがあると思うんですけど、そこを見逃していてどんどんメンタルは落ち込んでいってしまったり。その場その場の感情とか、「やりたい」に任せていると、私は私をうまく認められない。結局、「ダメな自分」みたいなものに向き合うことになり、自分の否定が始まります。

 『ニーチェはこう考えた』で、著者の石川さんは失恋を使って説明している、失恋というのが、世界の否定につながる、世界から否定された気になるみたいなことを書いています、たしか、違っていたらすいません。いや、なんかこれもよくわかるというか、うまくやっていないときの自分、感情に流されている時というか、そういう自分って、短いスパンで一目ぼれと失恋を繰り返しているみたいな感じになりません?笑 笑えないかもしれませんが、わかってくれる人もいるんじゃないかなと思います。みんなはどうですか? しかも失恋って本質的には乗り越えないですよね。私はそう思います。乗り越えてない、結局ずっとうずきます、なんかのスイッチで「うぅぅぅ」ってうずきます。10年前でも、20年前でも。で、だから坂口先生は一目惚れもしないし、失恋もしないために時間割とか企画書とかそういうことを勧めていると思っていて、ひとめぼれっていうのは結局理想主義です。そして失恋っていうのは現実の否定です。だから、ニーチェもおんなじことを言っています(『ニーチェはこう言った』によれば)。

 なんか話は堂々巡りなんですが、今日みんなに話したいのはやっぱり「あなた自身が一番大事」ということ。それは「いま生きているあなたを肯定する」ということです。「今ここ」ではない「本当の自分」という理想をもってきて「生きる」んじゃないんです。「いまのあなたを肯定する」 そのときでもなかなかうまく肯定できないですから、誰かに相談してみる。これ、結構言ってますよね坂口先生も。あと別の本で國分功一郎先生もむっちゃ言ってました。そうすると、いや、あなたのこれいいじゃんってなる、ちょっとだけこうしてみなよってなる、そうやって、たぶん楽しいこととかやりたいことが見つかる、「楽しいことだけをしている自分」とか「やりたいことだけをやっている自分」という遠いものがどっかにあるんじゃなくて、今ここの自分の中に、「楽しい」「やりたい」を見つけていくんです。

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