意外といけるぞ、中途採用
「春の連続投稿チャレンジ」に便乗した執筆ペース向上週間。最終回の第七回は食の話題から少し毛色を変えて、#転職体験記 を記していく。
転職者に優しい時世
私は現在職を離れ、新しい仕事を探している。
講師、デザイナー、デザイナーと職を転々としてきて、次は何をしようかふらふらと悩んでいる。
転職について周囲に助力を得ると、私が新卒で社会に飛び出したころより一層転職のしやすい時代になっているなと感じる。
転職は怖くない?かも
人材の枯渇
まず、少子化のおかげで年齢によるハードルが下がった。
現在の生産年齢人口のうち、二十代はなんと20%程度しかいないという。
「なんぼ中途採用ゆうても、三十代以上で会社辞める奴は信用できひん。うち来ても数年で辞めるんちゃうか?」というある意味妥当な気持ちで採用枠に年齢制限を設けたとしても、U29と安易に設定すると、働ける人間の内八割を切り捨てて人材探しをしなければならなくなる。これでは見つかる人材も見つからないだろう。
そういうわけで、余程新人教育にゆとりがある企業や、京都マダムのように「うちに入ってもらうからには、うち色に染まってもらわないと」という強い信念のある企業以外は、年齢を見ても無条件に切り捨てる選択はしなくなりつつあるように体感した。
今後この傾向はますます高まるだろう。
ブラック企業の認知
辞めるには辞めたくなるだけの理由がある。という認識がネットの流布によってより人々の間に広まったというのも、転職のしやすさに繋がっていると思う。
「上司がクソで」とか「マジ残業キツくて」とかの感情的な理由付けは依然として敬遠されるが、「同僚や他部署の方とは仲良くさせていただいていたのですが、直属の上司に当たる方と折り合いが悪く」とか「月〇時間の残業が続くと身体にも支障をきたしまして…免疫が下がるせいか、気を付けていても体調を崩すことがありました」などとちょっと肉付けするだけで、するっと見逃してもらえるようになった。
時効と思って話すが、私が新卒で入った企業は、労基署からお墨付きをもらった。
退職する際、親や友人に「逆によく〇年も勤めたよ」と慰められたが、親しい間柄の人だからこそそう言うのだろう、と一歩引いて考える自分がいた。
はじめて労働基準監督署に駆け込んだとき、受付の担当者もそんな反応だった。「あらら、新卒でね、まあゆとり世代だものね、こんな人目のあるところで簡単に泣いちゃってね。でも、世の中そんなもんなのよ」という空気があった。それでも食い下がって調査に入ってもらった結果、担当者から電話でこんな風に告げられた。
慰謝料や諸々の問題は未解決で流れてしまったが、私はこの電話で少し胸のつかえが取れた。初対面の時はゆとり世代の甘ちゃんめ、という雰囲気で耳を傾けていた担当者が、最終的には怒りを露わにして言うべきでない本音まで打ち明けて同情してくれた。
この言葉のおかげで私は人間不信の引きこもりにならずに済んだし、世の中捨てたもんじゃないと思えた。そして、私は間違っていなかったんだとも思えるようになった。
私より上の世代も、下の世代も、きっとこういう体験を多かれ少なかれしてきたのだろう。そして私のような口の軽い人間が、こうしてネットに書き込むのだろう。こうして事例を簡単に閲覧できるから、自分は経験がないが、ヤバいところはあるらしいなあと頭の隅に留めておく人も増えたのだろう。
辞めるのは必ずしも本人の努力不足や怠惰ではない。という認識が広まっている。きちんと準備をして退職理由を伝えれば、転職回数は然程重要ではなくなるようだ。
蛇足になるが、三十歳で六回転職している人に出会ったときは流石にビビった。大卒だと仮定したら平均1年ちょっとで職を転々としていることになる。それでも問題なく社会人をやれているのだから、理由が大事なのだと増々分からせられる。
転職こそが実用的なキャリア形成なのでは?
転職活動は、転職支援サイト一社に登録しておこなっている。悠々自適に遊びながら、気が向いた時に気が向いた会社へぽちぽちエントリーする。ふた月で50社応募して、一次面接の案内が来たのは10社程度、そして途中で辞退せず内定までこぎつけたのが2社という進捗である。
何が刺さったのだろう
面接に伺って「ああこれは入社後苦労するな」と考え直す会社もあるが、根がミーハーなので、企業リサーチをしていると段々先方のことが好きになる。知れば知るほどコロッと好きになる。そして落ちると大体しょげる。
最初のひと月、初期はポートフォリオ作成がメインだったので面接の対策といえば実質半月だが、ともかく最初の頃は面接の態度に問題があったのだと思っていた。熱意が伝わらなかったか、とか、もっとポートフォリオの説明を盛り上げるべきだったか、とか反省した。
だが、転職支援サイトでエージェントに相手方の反応を聞くと、面接の話しぶりは問題なかったと返されることが多かったらしい。単なる実務経験の不足だと告げられたと。
(じゃあ逆に、私に内定をくれた企業は何を見て採用したのだろう?なんの罠だろう、そんなに応募者が少ないのかと不安になる。)
勤め先が業務内容を定める
ところで、実務経験が不足していると言われると、私は「どうしようもないな」と思う。
経験不足と言われても、企業に所属していた以上、私が勝手に仕事を見つけてくるわけにはいかない。
営業がクライアントを見つけて、ディレクターが方針を決めて、デザイナー含む我々下っ端チームは指示書を逸脱しないように作るしかない。出来る提案はするものの、あんまり我を出すとコーダーの首を絞めかねないので、派手には動けない。
それに、新しいビジネスに手を出すか否かは社長はじめ企画課と上層部の気分次第なので、こちらから提案したところで業務外のことに首を突っ込んだとして不和を招きかねない。
人間関係が大事だと企業側がいうから波風立てないようにしていただけで、好きで経験不足になったわけでもないし、好きで仕事の分野を狭めたわけではない。
無職でいた期間は転職活動中の数か月だけで、職業訓練や留学などで勤続年数が極端に短いわけでもあるまい。
反骨精神をむき出しにして、もっとアクティブに仕事をすれば良かったのかもな、とも思う。
だが、経済的不安を取り除くためについつい日和ってしまう。チキンが災いした。
そんなわけで、毎日の業務自体は可能な範囲で頑張っていたのだから「しょうがないな」としか言いようがない。
最初に勤めた会社のようなところでもっと馬車馬のように働いて下積みしろと言われたら、流石に「どんなにやりがいのある仕事であれ、そこまで命は張れない」と突っぱねるしかない。
自分がほどほどを求めた結果、身から出た錆である。
経験を豊富にするための転職
まあ私の甘えと言い訳は聞き流していただいて。
命は張らず、そこそこに頑張って、理想の企業のお眼鏡に適う技術を身に着けようとなると、何が良い選択になるのだろう。
そう考えて、私は「転職を繰り返したらいいのでは?」という結論に至った。インハウスデザイナーを二三年こなしては、次のインハウスデザイナーになる。もしくは、万が一劇的にゆるいデザイナー職の募集を見つけたら、副業をして顧客層の幅を広げる。
こうすればデザイン案のマンネリも防げるし、似たような依頼が100件積み重なって「数はこなしてますけど経験不足ですね」と撥ねられる事態も回避できるのではないか?
しかし、これをするには面接時の「前職を退職した理由」の明示が難しくなってくる。日本は全体的に不景気、しかも転職サイトが百万円以上の中抜きをするので、企業は採用に慎重になる。すぐ辞めそうだと判断すると、技術が申し分なくても「総合的に判断した結果」と不採用通知を送ってくる。
なので、正直に「似たようなデザインばっかGOが出てスキルの成長が見込めないので」と言うのは分が悪い。
私の経験上、熱意が図られるのは面接時のトーク力ではなく、結局ポートフォリオの出来だからだ。
あくまでも、上手い説明を準備する。
そのために、転職エージェントは使えるだけ使うのもアリだと思う。
少しずつ転職を繰り返し、実務経験を豊富にしていく戦法について、先達が居るなら是非結果を聞いてみたい。