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ダークグラス~見えない困難と恐怖~

「ダークグラス」のレビュー記事です。
イタリアの映画監督、ダリオ・アルジェントの最新作。
監督の過去作は、サスペリアとサスペリアpart2(実はシリーズではない!)を見たことがある。雑な脚本と、何かが起こるたびにゴブリンの恐ろしそうな曲が流れる構図にどうしてものれなかった。
そのため、ジャッロ映画の巨匠ではあるが、あまり怖い映画ではないと思っていた。

今作も作風は全く変わっておらず、主人公が車を運転しているだけでいかにも何かが起こりそうな曲が流れる。だが特に何も起こらない。
脚本も相変わらず雑で、養護施設に行く場面など、主人公の態度は違和感を覚えるほどとんでもない。
最後に少年の母親の死を告げる場面も、信じられないセリフを放つ。
脚本はアルジェントが書いているらしい。まあ、そんなものだと考えると、所々で雑さを取り返すような場面もあったりする。

例えば歩行訓練士の家に逃げ込んだ時の彼女の説得などは「ようやくまともな人が出てきた…。」と安心するものである。ちなみに彼女はアルジェントの娘だという。
また、売春をしている主人公を蔑んでいる家政婦の存在は、結構な厭さだった。もう少し彼女にも活躍してほしかった。

主人公が視力を失った後は、サングラスが主人公のアイコン的な存在になる。タイトルにもなっているし、途中で無くして買い足していたから、何か意味があると思っていたら、そんなことはなかった。ただ視力を失ってサングラスをかけているだけだった。

最後の方になればなるほど物語は面白くなっていくのだが、特に中盤までの雑なところを「そんなものだ」と楽しむ度量が観客には求められる。
主人公が盲目なことは想像以上に効果的で、介助する人物が必要なところがいい。中国人の少年との友情の説得力も出るし、走って逃げることが難しいことがスリルにもなる。
逃げている最中に転んだりしても、ご都合主義ではなく感じられるのもいいところ。

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