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#小説
Track 07.『とある魔法』/オオヤケアキヒロ
暑い夏の夕方、空が真っ赤に焼けていた。
蝉の声と肌を剥がしにかかるような暑さにうんざりしていた。
夏生まれだからか体に刺さる灼熱は嫌いではない。
が、生理的に疲れて来るのはしょうがない。
とはいえ、まだ少しだけ家路に強く香る夏の息吹を愉しむ余裕はあったが、それでも帰ってすぐにシャワーを浴びてニプシー・ハッスルを聴きたかったし、実際にそうした。
そう言えば、俺がニプシーを聴くようになったのは、彼が
Track 03.『雲から一歩』/オオヤケアキヒロ
Yeah,yeah.初めに言葉ありき。メロディ、ラップ、スクリーム、すべては等しく音に合わせて話すのが始まり。初めて歌うかい?なら、上手い下手や小手先のメロディを追いかけない。始めて惚れた子の肢体を求めるが如く激しい愛は隠さない、しかし同時にダンスを踊る様に優雅にマナーを持って揺れるが良い、さすれば喉は開かれん、違うかい?
…急速に、だが意図した通りにGigi Masinの『Clouds』が解
Track 02.『少年の詩』 虫田痼痾
心の靄が晴れない。
日々の苛立ちはどうしようもないほどに些細なことだ。しかし指先に刺さった棘がやがては肉を腐らすように、瑣末な悩みが心を腐らせていく。
目下、私を悩ませているのは蝿だ。本格的な暑さも過ぎ去ったから大丈夫だろうと油断した。気がつけば台所を、あの鬱陶しい小虫どもが飛び回っていた。台所に、といえばいかにも平気そうに聞こえるが、ワンルームの一室においてはそこはリビングでもあり寝室でもある。
Track 01.『落雷』/オオヤケアキヒロ
しとしとと霧のような雨が降る、寒い寒い冬の日だった。どうしようもなく煮詰まって、逃げ込む様に部屋へと戻ってきた。
謂われのない罵声と叱責ばかりを突き付けられ、それをポーズだけの仕事しか出来ない馬鹿が陰で笑っているよ、とまた別の馬鹿からありがた迷惑なチクりを押しつけられ、やりたい事とやるべき事のギャップが埋まらない日々を
「もっと真面目にやれよ」
なんて言うふうに頭ごなしに罵倒された、夜勤明けの