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024 こういう言葉を使うと心理的安全性を損なう
心理的安全性を損なうとされている言葉の代表は、「その話は必要ない」「だから何?」「横道に逸れている」である。
これらの言葉が飛び交う会議は、たいがい誰もしゃべらない。
上司からどうでもいいような連絡事項が言い渡され、誰も質問もしないまま、終了する。
その話は必要ない
会議の席で、若手君が何か言おうとしたら、とつぜん上司から「その話は必要ない」と言われることがある。
どうやら「みんなに知られてはマズイ話」のようだ。
若手君は、上司の社内での政治的な争いを知らないから、普通の報告のつもりで言おうとしただけなのに、咎められるのである。
そこではじめて若手君は「あっ、この話は知られちゃいけない話だったんだ…」と気づく。
そして若手君はこれを機会に「大人の事情」を理解するようになると同時に会議での発言を控えるようになる。
昭和の作法だ。
情けないのは、こういう「大人の事情」をカッコいいことだと勘違いする若者君が意外と多くいることだ。
この経験以来、若手君は会議で語ることを控え、貝のようにジーっとするようになる。
もちろん「その話は必要ない」には様々なケースがある。
たとえば、本当に必要のないケース。
上司:えー、商品Bに関するクレームの件ですが…
若手君:あっ、クレームと言えば、3日前のトイレ詰まりですが…
上司:その話は必要ない
もしくは単なる上司の文脈の読み違い。
上司:えー、商品Bに関するクレームの件ですが…
若手君:その話ですが商品Aを買ったお客様からも…
上司:その話は必要ない
若手君:(でも、同じ人がどちらの商品に対してもクレームつけてるんだけどなあ…)
こんなところだろうか。
でも、いずれにしても、会議の発言が減るという意味じゃ似たようなものである。
会議の場で「その話は必要ない」は使っちゃいけない言葉ということだ。
だから何?
険悪な会議では「だから何?」という言葉が飛び出すことがある。
上司:えー、商品Bに関するクレームの件ですが…
若手君:これに関して私の意見ですが…
上司:何?
若手君:私が調べたところ〇〇という原因があることが分かり…
上司:だから何?
おそらく、上司はイラついているのか、発言者のことが嫌いなんだろうね。
もちろん、上司の顔色を無視してずけずけと語る若手君にも問題があるかもしれないけど、それ以上に上司に問題がある。
はっきり言って、この言葉は「お前は黙ってろ!」という意味だからだ。
確かに、本当に意味を知りたくて「すみません、教えてください」という意味で使っている場合もあるだろう。
でも、まずそんなことはない。
実際にこの言葉を使う上司に合えば一目瞭然で、イラついていたり、若手君のことを嫌っていることが分かるはずだ。
会議でこの言葉が1回でも出るような会社は、まずコミュニケーションの問題を抱えていると思って間違いない。
横道に逸れている
創造的な会議ほど、横道に逸れた会話が飛び出すものだけど、それを上司が咎める場合がある。
Aさん それにしても今回のイベントはラッキーだったね
Bさん そうそう、○○社の社長が来るとは思ってもみなかった
Cさん それだけじゃないよ ちょうど試作品が目に着く場所にあったのもラッキーだったね
上司 おいおい、横道に逸れているぞ! 来年度のイベント計画の話に戻すぞ
会議で「横道に逸れている」って言葉が出るときの状況は次の4つが考えられる。
1.そう言われても仕方ないくらい、横道に逸れた話をした。
2.本来目的や文脈に沿った発言だけど、上司がそれを理解していない。
3.上司は発言の意図を理解していたけど、支配欲からこの言葉を使った。
4.上司は、会議の時間や目的を考慮し、あえてこの言葉を使った。
この言葉は、「その話は必要ない」「だから何?」に比べたら、そこまで悪質ではない。
とは言え、1~4のどれであっても、あまり好ましくはない。
そもそも会議というものは横道に逸れるくらいの方でちょうど良いからだ。
WEBが登場する前の昭和の会議だったら、理路整然とした連絡会議が主流だったろう。
でも今の時代、合意形成が目的の場合ともかく、アイデア創出の会議だったら脇道に逸れるくらいでちょうど良い。
それを許されないというだけで、その会社の知的生産性は察しがつく。
心理的安全性はそこまで損なわれていないかも知れないけれど、組織風土は可もなく不可もなくという感じじゃないだろうか。