心揺さぶられる58分間|映画「ルックバック」
先週末に夫と「ルックバック」を観に行った。
SNSで話題になっていたのと口コミの評判がよかったため、原作は鑑賞後に読むと決めてそのまま劇場へ。
結論から話すと「観てよかった」と、心から思える作品だった。
✍︎꙳⋆
紡ぎ出される映像や音楽がとにかく美しい。
あたり一面田んぼに囲まれた自然豊かな環境、きっと1日の本数が少ない電車、北国ならではの銀世界など。
まるで作品の世界にタイムスリップしたような感覚だった。
藤野と京本は、お互い頃なる才能を持っていて、まさに出会うべくして出会った最強コンビ。
タイプは違えど、没頭できるものが一緒の友人は貴重な存在なので、心底うらやましい。特に結婚して地元を離れたわたしにとって、ふたりの関係性が眩しくてたまらなかった。
13歳で佳作に選ばれたのはもちろん、賞金100万円をもらえるなんて、自分だったらどんな気持ちになるだろう?
藤野が10万円を手に取った際に、京本が「おうち買えちゃうよ」と、もらした姿が可愛かった。
特に街に出てふたりで手をつなぎながら歩いているシーンが大好き。
クレープを食べたり、映画を観てそのあと楽しくおしゃべりしたり、いつもと違うふたりの雰囲気を感じられて微笑ましかった。
しかし、京本は不登校生。外の世界に飛び込んだのは大きな決断だったのでは?自分が当たり前だと思っている世界は、相手にとって当たり前ではない場合があるし、逆も然り。
そのあと京本が「芸大に行きたい」と、自分の意思でやりたいことを決めたシーンは緊張感が走った。
藤野は京本が自分のそばから離れてほしくない気持ちがあったから、辛く当たってしまったけれど、素直になれない藤野の気持ちも納得できた。
高校卒業してから一緒に漫画を描こうと思った矢先だったのに、突然それがなくなってしまうのは悲しいから。
だからこそ悲惨な結果になってしまったのは、悔やんでも悔やみきれなかったのではないか。わたしが藤野の立場だったらと考えるだけで胸が痛い。
けれど、京本は幸せだったんだろうな。
同じ漫画の巻を何冊も買い、応募ハガキも用意していたシーンを見て、これが‟愛”だと伝わってきた。
藤野と出会い、今まで見たことのない景色を見て体験し、自分で決めた道に進む。
ありきたりなことかもしれないけれど、1人の人生を大きく変えたことに変わりない。
そう考えると、やはり藤野と京本は出会うべくして出会ったのだ。
藤野の背中を見るたびに、京本の笑顔を思い出す。
✍︎꙳⋆
きっとあの劇場内にいた観客の中で、わたしが一番泣きじゃくっていたと思う。
頭を鈍器で思い切り殴られた感覚に陥り、しばらくボーっとしてた。
その後夫と飲みに行く予定があったのは、ナイスタイミングだったな。
あのまま家に帰っても平常心ではいられなかったと思う。
キラキラの世界観ではない青春モノ。
今年観た映画の中で、間違いなくNo.1だった。
たった58分間という、映画にしては短い時間だったにもかかわらず、いろんなものが詰まった重厚感を味わえる作品。
何時間も座って映像を観るのが苦手な方でも、あっという間に感じられそうな作品なので、気になったひとはぜひ観てほしい。
ちなみに先日、原作(電子書籍)を購入して読んでみたら、映画と全く同じ内容だった…!紙の本も買って、周りにも勧めねば。
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