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絵の話・筆には何ができるのか

昨日久しぶりに筆をもちました。

と言いましても、絵を描いていたのではありません(’∀’)
4月から月イチ開催していた運筆部のまとめ、それを一人行っていました。


運筆部


運筆部、それは「筆運びを練習する群れ」。
筆、つかえるようになろう(’∀’)という志をもとに集った仲間たち。

共同アトリエの画家さんと、彩色師さいしきしの知人と私の3人で
この春からぽつぽつやっている取り組みです

彩色師という職業がございまして、これもまたとりあげたい話の1つ。

3人みんな個人事業主、気楽にほんわかやっています。
しかしまぁこれがなかなか難行でして。
当初は「noteのネタにもなるな」と思っていたものの
あまりの理解の浅さ&習得の出来なさ。
記事にすることはうっちゃり、目を細めていたこの半年でした。

制作に使っている筆たち


THE水墨な「竹」を描いたり、三墨法したり、
筆を買ったり、明治~大正の教科書から「臨画」というワードを手に入れたり、実際に切り花を運筆で写生してみたり。


肉筆お手本や水墨画の教科書を参考に四苦八苦


紫陽花を写生しても「運筆」してるというより塗り絵になるんですねぇ

やればやるほどに、これムズカシイなというのが強まる。
そこで前々回はシンプルに「北斎の一筆画」に取り組み、

直近では、習字に取り組む(’∀’)


私含めて3人とも「絵筆」を持って生きているわけですが

いやコレ、習字からだな、と。



ここを話すとたいへん面白いのですが割愛。
絵と書と水墨画、毛筆の使い方がわりと違うんです。

私はじめ大半の「日本画」畑の人は毛筆のポテンシャルを活かしきれてない気がしています。
習わない・知らない・選択できない。
このナイナイ3兄弟。
運筆部は「もっと毛筆を活かせるように」というのを目的にしており
書道・習字が大事だなと気付いた最近です。


ムズカシイ・ワカラナイ・デキナイ、でも楽しい、と
とりとめなくやってきて、散らかり放題だったので
「筆って何ができるのか」を整理してみたのが昨日です(戻った)


筆ってどんなものなのか、
筆って何ができるのか、
フォロワーさんに書のプロもいらっしゃる中で汗顔の至り(本当に)ですけれど
ちょっとまとめてみましただいぶ渋い記事(3000字)
「筆、もっと楽しんでみようかしら」のきっかけになれば幸いです。


より深く調べたい方向けの「まとめキーワード」は末尾


※「筆=毛筆」の意で用いています


筆とは


筆もたくさんの形状・素材がありますがオイトイテ、
こうしたものですね。

良筆の四徳は「尖・斉・円・健」
こういうカッコイイ言葉がポロポロ出てくる筆の世界。
今回は喜屋さん販売の付立筆「玉蘭 中」。



毛が一点でまとまる尖端、
また、幅・長さ・厚みのある穂。
穂はその厚み=含みとなる、インク壺のようなものでもあります。

先っぽで点も打てれば
穂全体を使って面も作れ、含みの量も調整できる。

まぁ控えめに言って「魔法の道具」です(’∀’)



点は小さな「面」、それが途切れず続けば「線」になります。
一筆で「線と面を柔軟に行き来できる」のが筆の特性の1つ。


筆の傾き、水平・垂直の動きを組み合わせながら
一筆で多様な顔が見せられます。
守備範囲が広いというか攻撃力が高いというか。


「1つの筆で色々できるよ」の図

ついでながら持つ位置が軸の根元に近ければ「自分の動き」が筆致に出やすく、
軸の上端に近ければ「筆の性質」が出やすくなる。

また軸の固定は指の本数や、
軸と親指の交わり方(直角か平行か)で変わる。

まぁまぁまぁ、大変な騒ぎです。


サンタ気分のブッセ

まぁそれをわかりやすい筆致でお見せできないところにワタクシの力量が現れております(’ω’)



まだまだ


まだまだ筆のポテンシャルはありまして、
毛の集合体というところにもご注目です(*’∀’)

毛がたくさんあるものですから
こういうこともできますよの例がこちら。


A:筆を絵皿に押し付けながら左右にふる


B:同じく絵皿に押し付けながらねじる


大事な筆を荒らす後ろめたさがあるのはオイトイテ、
こうしてさばいた筆先でサッサッサと。

「割り筆」と呼ばれるもの。動物の毛や松葉、栗のイガなど描きやすいです。


運筆部で「ほほぉ!」となったのが
こちらの鎌首戦法。


絵皿に押し付ける。穂先は後で整える。指で形成してもよし。


水墨画の動画など見てましたら、指や皿で穂の形を作ってから描かれてまして。


なんでもやろうと思えば出来るんだな、というのが筆への感想です。

これは「求めよ、さらば与えられん」。

(ただしウデ次第)


なるほど、筆とは如意棒にょいぼうと見たり。


如意葉っぱ


思うがまま


まだまだ唸りながら五里霧中してますが、
「筆、好きに使えばいいんだな」と思えるようになりました。

書道だと画面に筆を垂直に立てるのが基本でしょうし、
社寺彩色の時も「筆は立てて」という場面が多かった。
あと「腹で描け」ですね。

まっすぐに塗りきる時は特に、穂先が中心を通りながらしっかりと腹をあてて描くのがコツでした。
ですので腹MAXで描いたときの幅が、塗る面の幅と等しい筆を選ぶと簡単。
また唐草みたいなクルンとしたのを描くとき・塗るときは
穂先が中心を通るように筆の軸を回しながら描くなど
こうしたものは社寺修復の仕事で教わりました(学校で習わない系)


水墨画は日本も中国も筆を倒したり立てたり縦横無尽な感じなんですよね。
絵となると字に比べ自由度が高い分、筆の動きも放埓になるのかしら…と。


さて「好きに使えばいい」という第3の眼が開き、
さっそく筆を転がしてみました(’∀’)

あら、銀杏が(*’∀’)

これが没骨もっこつ付立つけたてのオソロシイ部分です。


墨色の魅力とあいまって、「〇〇」と言い切れば、
簡単に精神的な絵画にできてしまうという(’∀’)

それを嫌って写実・写生の動きがうまれ、鉛筆も普及し、
義務教育から「臨画」のカリキュラムが失われ、
毛筆を活かす機会が減少したのがイマココ。


没骨・付立、国公立の美大や模写系だと少し教わるみたいなんですけれど、
独学だと水墨画畑の方の動画を見るのが早いかな。


筆の形を活かすだけでもこんなにバリエーションがあり、
更に墨の付け方、グラデーションを生む調墨とかが加わってきましてね。

形状に加えて色面のバリエーションも豊かすぎるんですねぇ(途方に暮れる)


まだ呑み込めていないので簡易な言葉にできませんが、
以下、運筆に思うまとめ。

・表現の幅:文房四宝=紙・墨・筆・硯で決まる
・色・形・質感の幅:筆の性質で決まる
・可動域:姿勢で決まる
・色・形・質感:筆の持ち方・動かし方で決まる

これらがくんずほぐれして沼ですが、例えば「持ち方」を変えるだけでも大きな変化があります。


筆は感情表現に適しているとも言われますが(腕のプルプルもダイレクトに出る)
筆の描画を「時間の痕跡」と言われているのを聞いたとき
そちらの方が腑に落ちるなぁと思いました。

やはり面白い道具です。





最後まで読んでいただきありがとうございます。

情報過多。

しかも渋めに運んじゃったのでブッセをそこらに散りばめました(’∀’)

墨マニアの人から言わせると、
紙×硯だけでこれまた無限とも思われる表現幅だそうで。
そこに軟水とか硬水とか入ってくるわけでしょう…?

まぁ生きている内にどこまでできるかな状態ですよね(’∀’)

ひとまず筆と仲良くなるのを目標に、いそいそ体を動かしたいと思います。



次回はたぶん龍のあとじめ(渋い)



おまけ

より詳しく知りたい方向けのキーワード

・姿勢
懸腕法、提腕法、枕腕法けんわんほう、ていわんほう、ちんわんほう

・持ち方
単鉤、双鉤、撥鐙法、握管法たんこう、そうこう、はっとうほう、あっかんほう
余談ながら「カギ」という字にときめきます(*’∀’)

・調墨
三墨法、片隈、両隈、筋隈、元隈、先隈

・筆運び、含み、形状
直筆、側筆、順筆、逆筆、潤筆、渇筆、割り筆(破筆)

・その他
没骨(付立)、鉤勒、鉄線、肥痩線、垂らし込み、潑墨法、積墨法

・筆の基礎練習したい方
基本点画きほんてんかく、なぞり字、略画、鍬形蕙斎 鳥獣略画式、
葛飾北斎 伝神開手 一筆画譜

・むかしの日本の美術教育が知りたい方
小學色圖解、小學毛筆圖畫帖、小學畫手本附録、百工画手本、臨画
(東京学芸大学教育コンテンツアーカイブなどで見られます)


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巳白
応援、ありがたく頂戴しております。いただきましたサポートで、また1日長く絵に専念できます(о´∀`)

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